証拠調べだと「証人尋問」のほかに「書証」がありますよね。
そうだね!書証については比較的簡単に理解できると思う。しかし刑事訴訟法ではほとんどやらないからしっかりチェックする必要があるな。
証拠調べには「人証」と「書証/証拠物」があります。人証については前回の証人尋問が参考になります。
>>>証人尋問についてわかりやすく解説!【はじめての刑事実務基礎その9】
今回は、「書証/証拠物」についての証拠調べです。
すなわち証拠調べ決定が行われた「書面/証拠物」について、どう証拠調べを行うのか?
についてみていくというわけです。
証拠書類・証拠物の証拠調べのポイント
証拠書類・証拠物の証拠調べは刑事訴訟法・刑事訴訟規則の条文に従ってみていけば基本的には大丈夫です。
規定としては「証拠書類」と「証拠物」「証拠物たる書面」の3種類に分かれています。これを分けてしっかり押さえていきましょう。
証人尋問のような複雑な規定ではないので、今回はそれほど悩まず理解できると思います!
①証拠書類の証拠調べの方法について押さえる。
②証拠物の証拠調べの方法について押さえる。
③証拠物かつ書面の証拠調べ方法について押さえる。
それでは見ていきましょう!
証拠書類の証拠調べは朗読・要旨の告知
まずは証拠書類についての証拠調べについてみていきます。
証拠書類というのは「書面の記載内容だけが証拠となるもの」のことです。伝聞例外や同意(刑事訴訟法326条1項)がされた供述調書などがこれに該当します。
刑事訴訟法305条を見てみましょう。
第三百五条 検察官、被告人又は弁護人の請求により、証拠書類の取調べをするについては、裁判長は、その取調べを請求した者にこれを朗読させなければならない。ただし、裁判長は、自らこれを朗読し、又は陪席の裁判官若しくは裁判所書記官にこれを朗読させることができる。
② 裁判所が職権で証拠書類の取調べをするについては、裁判長は、自らその書類を朗読し、又は陪席の裁判官若しくは裁判所書記官にこれを朗読させなければならない。
③ 第二百九十条の二第一項又は第三項の決定があつたときは、前二項の規定による証拠書類の朗読は、被害者特定事項を明らかにしない方法でこれを行うものとする。
④ 第二百九十条の三第一項の決定があつた場合における第一項又は第二項の規定による証拠書類の朗読についても、前項と同様とする。この場合において、同項中「被害者特定事項」とあるのは、「証人等特定事項」とする。
⑤ 第百五十七条の六第四項の規定により記録媒体がその一部とされた調書の取調べについては、第一項又は第二項の規定による朗読に代えて、当該記録媒体を再生するものとする。ただし、裁判長は、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、相当と認めるときは、当該記録媒体の再生に代えて、当該調書の取調べを請求した者、陪席の裁判官若しくは裁判所書記官に当該調書に記録された供述の内容を告げさせ、又は自らこれを告げることができる。
⑥ 裁判所は、前項の規定により第百五十七条の六第四項に規定する記録媒体を再生する場合において、必要と認めるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、第百五十七条の五に規定する措置を採ることができる。
長い条文ですが、基本的には刑事訴訟法305条1項を見ておけば大丈夫です。
証拠書類は朗読によって証拠調べを行う
これさえ押さえておけばとりあえず大丈夫です。
加えて刑事訴訟規則203条の2を見てみます。
(証拠書類等の取調の方法)
第二百三条の二 裁判長は、訴訟関係人の意見を聴き、相当と認めるときは、請求により証拠書類又は証拠物中書面の意義が証拠となるものの取調をするについての朗読に代えて、その取調を請求した者、陪席の裁判官若しくは裁判所書記官にその要旨を告げさせ、又は自らこれを告げることができる。
2 裁判長は、訴訟関係人の意見を聴き、相当と認めるときは、職権で証拠書類又は証拠物中書面の意義が証拠となるものの取調をするについての朗読に代えて、自らその要旨を告げ、又は陪席の裁判官若しくは裁判所書記官にこれを告げさせることができる。
証拠書類を朗読するとなると非常に時間がかかります。そのため、朗読に代えて「要旨の告知」をすることも可能です。
それじゃあ、実務では基本的に「要旨の告知」ってわけですね。
実はそうでもないんだよ。
裁判員裁判の場合には、「要旨の告知」ではなく「朗読」で行われることが多いんだ。時間の速さよりわかりやすさを求めるためだな。だから裁判員裁判では証拠調べをする書証はより限定されるぞ!
証拠物の証拠調べは展示
証拠物(刃物など)についてはどのように証拠調べを行うのでしょうか?
答えは刑事訴訟法306条に書かれています。
第三百六条 検察官、被告人又は弁護人の請求により、証拠物の取調をするについては、裁判長は、請求をした者をしてこれを示させなければならない。但し、裁判長は、自らこれを示し、又は陪席の裁判官若しくは裁判所書記にこれを示させることができる。
② 裁判所が職権で証拠物の取調をするについては、裁判長は、自らこれを訴訟関係人に示し、又は陪席の裁判官若しくは裁判所書記にこれを示させなければならない。
証拠物は裁判長に示す
これだけを押さえれば大丈夫でしょう。このことを「展示」といいます。
展示と聞くと上記の絵のような展覧会を想像してしまうと思いますが、刑事訴訟の展示とは裁判長に示すだけの簡単なものです(笑)。
証拠物たる書面は展示と朗読
最後に証拠物と証拠書類のミックスされたパターンについてみていきましょう。
証拠の中には、証拠物でありながらもその内容にも意義があるものがあることがあります。
日記や手帳などを想像してもらえればわかりやすいと思います。
日記や手帳はそれ自体が証拠物として参考になるとともに、内容も調べる必要があるからです。
この証拠物たる書面の証拠調べについては刑事訴訟法307条をみてみましょう。
第三百七条 証拠物中書面の意義が証拠となるものの取調をするについては、前条の規定による外、第三百五条の規定による。
刑事訴訟法307条の前条の規定というのは刑事訴訟法306条の「展示」のことです。そして刑事訴訟法305条は「朗読」を既定していました。
すなわち、証拠物たる書面の場合には「朗読」と「展示」の両方を行うというわけです。朗読して裁判長に見せるということですね。
まとめ
以上、証拠書類や証拠物についての証拠調べについてみてきました。証人尋問よりはるかに覚えやすいと思います。
〈証拠書類・証拠物・証拠物たる書面の証拠調べ方法〉
①証拠書類→朗読(刑事訴訟法305条・刑事訴訟規則203条の2)
②証拠物→展示(刑事訴訟法306条)
③証拠物たる書面→展示と朗読(刑事訴訟法307条)
しっかり覚えていきましょう!私も頑張ります!
読んでくださってありがとうございました。ではまた~。
参考文献
刑事実務の基礎は、よりよい参考書がほとんどありません。
予備校本で勉強するのがよいでしょう。辰巳のハンドブックは予備試験口述の過去問まで載っているので、口述試験対策という意味でもお勧めします。
正直これ以外で改正された刑事訴訟法に対応した良い参考書は今のところないと思います。