勾留の弁護士対応をわかりやすく解説!【刑事実務基礎その3】

法律実務基礎科目

被疑者が勾留されている場合に弁護士がどう対応すればいいか、こんがらがるんですよね。

勾留取消しとか準抗告とかよくわかりません!

法上向
法上向

なるほど、勾留の対応か。

勾留の対応は、一回自分で整理してみるとわかりやすいぞ!

勾留の際の対応というのは弁護士ならではの観点です。そして、勾留の際の対応は刑事訴訟法ではほぼ勉強しないでしょう。

そのため、刑事実務基礎特有の分野といえます。

対応方法としては、理由開示取消し執行停止準抗告などがありますが、いろいろあってわかりづらいと思います。どの場合にどれを使うかが見えてこないのです。

今回は勾留の対応についてわかりやすく整理していこうと思います。

勾留の対応のポイント

勾留の対応のポイントは「どの場面でどの方法をとるか」に尽きます。どの場面での対応か、どういう状況での対応かしっかり頭に入れる必要があるのです。

また、同時に、弁護士の立場になって考えることをおすすめします。常に、「どうすれば被疑者を救えるか」を意識すると理解しやすいはずです。

以上を意識しながら、対応を4つ理解していきましょう。①勾留理由開示②準抗告③勾留取消④勾留執行停止の4つです!

①勾留理由開示を理解する。
②準抗告を理解する。
③勾留取消を理解する。
④勾留執行停止を理解する。

それでは見ていきましょう。

勾留理由開示

勾留理由開示は刑事訴訟法207条1項・82条1項

被疑者が勾留された場合の対応としてはまず「なぜ勾留されたのか」を知る必要があります。

その際に用いるのが、勾留理由開示です。

勾留理由開示について知りたい場合には刑事訴訟法82条~刑事訴訟法86条までを通読すればよいでしょう。

第八十二条 勾留されている被告人は、裁判所に勾留の理由の開示を請求することができる。
② 勾留されている被告人の弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族、兄弟姉妹その他利害関係人も、前項の請求をすることができる。
③ 前二項の請求は、保釈、勾留の執行停止若しくは勾留の取消があつたとき、又は勾留状の効力が消滅したときは、その効力を失う。
第八十三条 勾留の理由の開示は、公開の法廷でこれをしなければならない。
② 法廷は、裁判官及び裁判所書記が列席してこれを開く。
③ 被告人及びその弁護人が出頭しないときは、開廷することはできない。但し、被告人の出頭については、被告人が病気その他やむを得ない事由によつて出頭することができず且つ被告人に異議がないとき、弁護人の出頭については、被告人に異議がないときは、この限りでない。
第八十四条 法廷においては、裁判長は、勾留の理由を告げなければならない。
② 検察官又は被告人及び弁護人並びにこれらの者以外の請求者は、意見を述べることができる。但し、裁判長は、相当と認めるときは、意見の陳述に代え意見を記載した書面を差し出すべきことを命ずることができる。
第八十五条 勾留の理由の開示は、合議体の構成員にこれをさせることができる。
第八十六条 同一の勾留について第八十二条の請求が二以上ある場合には、勾留の理由の開示は、最初の請求についてこれを行う。その他の請求は、勾留の理由の開示が終つた後、決定でこれを却下しなければならない。

公開の法廷で行う(刑事訴訟法83条1項)というのは、短答にもよく出る部分なので注意してください。

特に重要なのは、何度もいうように刑事訴方法207条1項・刑事訴訟法82条1項です。

なぜ刑事訴訟法207条1項が出てくるかはもう大丈夫ですよね?

刑事訴訟法はもともと「訴訟」についての手続を規定したものでしたが、捜査等にも適用範囲が広がっていきました。被疑者段階ではまだ起訴されておらず「訴訟」になっていないので、刑事訴訟法207条1項を適用しなければ、被疑者勾留についての条文にならないというわけです(刑事訴訟法207条1項を準用しないと、「被告人勾留」の規定になってしまいます)。

勾留理由開示は抽象的にしか教えてもらえない

勾留理由開示によってなぜ被疑者が勾留されたのかを教えてもらうのです。

ただし、そう簡単に詳しく勾留理由を教えてもらえるわけでもありません。というのも裁判官は「勾留理由と60条1項〇号の要件がある」と述べるだけで、具体的な理由説明をしないことが大半だからです。

これは捜査の秘密性・密行性が害されるので抽象的にならざるを得ないのです。

そのため、勾留理由開示はあくまで形式的に行われる対応という点は頭の片隅にでも入れておきましょう。

準抗告(刑事訴訟法429条)

準抗告とは

続いて勾留の対応としては準抗告が考えられます。

準抗告というのは「要件を充足していない!!異議がある!」というのを伝えるものです。

なぜ「準」抗告なのか気になりますよね。

被疑者段階では、対応するのは「裁判官」であるため、その「裁判官」に対して異議を申して立てることになります。

一方、被告人段階では、対応するのは「裁判所」なので、その「裁判所」に対して異議を申し立てることになるのです。

被疑者段階で刑事手続の要件充足性を争う場合には「準抗告」を用い、
被告人段階で刑事手続の要件充足性を争う場合には「抗告」を用います。

今回は被疑者段階の勾留の要件充足を争うため、「準抗告」になるというわけです。

準抗告は刑事訴訟法429条1項2号

準抗告は刑事訴訟法の最後の方にかかれています。刑事手続の各手続で要件充足性を争いたい場合にすることとしてまとめられているわけです。なお被告人段階での抗告も刑事訴訟法の最後の方にあります。

第四百二十九条 裁判官が左の裁判をした場合において、不服がある者は、簡易裁判所の裁判官がした裁判に対しては管轄地方裁判所に、その他の裁判官がした裁判に対してはその裁判官所属の裁判所にその裁判の取消又は変更を請求することができる
一 忌避の申立を却下する裁判
二 勾留、保釈、押収又は押収物の還付に関する裁判
三 鑑定のため留置を命ずる裁判
四 証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人に対して過料又は費用の賠償を命ずる裁判
五 身体の検査を受ける者に対して過料又は費用の賠償を命ずる裁判
② 第四百二十条第三項の規定は、前項の請求についてこれを準用する。
③ 第一項の請求を受けた地方裁判所又は家庭裁判所は、合議体で決定をしなければならない。
④ 第一項第四号又は第五号の裁判の取消又は変更の請求は、その裁判のあつた日から三日以内にこれをしなければならない。
⑤ 前項の請求期間内及びその請求があつたときは、裁判の執行は、停止される。

刑事訴訟法429条1項2号をみてみてください。

ちゃんと「勾留」の文字がありましたよね?

このように勾留については要件充足性を争うことができる、という規定がちゃんとあるわけです。これを準抗告というわけですね。

準抗告はほかにも「保釈」等で使えるので、弁護士側の対応としては頻繁に出てくるものです。しっかり覚えていきましょう!

勾留取消し

勾留取消しは勾留の理由・必要がなくなった場合

勾留取消しは勾留の要件である「理由」や「必要」がなくなった場合の対応です。

最初から勾留の「理由」や「必要」がなかった場合には準抗告を用いるのですが、途中でなくなった場合にはこの勾留取消を使います

勾留の理由は「犯人性」「刑事訴訟法60条1項各号該当性(住所不定・罪証隠滅のおそれ・逃亡のおそれ)」でした。

勾留の必要は「公益の必要性VS被疑者の被侵害利益」でした。

>>>勾留の要件「理由」「必要」について詳しく解説【はじめての刑事実務基礎その2】

これらが勾留中に失われた場合には、もはや勾留することができないため、勾留取消を用いるわけです。

勾留取消しは刑事訴訟法207条1項・刑事訴訟法87条1項

刑事訴訟法87条1項を見てみましょう。

第八十七条 勾留の理由又は勾留の必要がなくなつたときは、裁判所は、検察官、勾留されている被告人若しくはその弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹の請求により、又は職権で、決定を以て勾留を取り消さなければならない。

刑事訴訟法87条1項は勾留の要件を導き出すときにも使った条文でした。今回は刑事訴訟法87条1項を直接的に使います。

勾留の「理由」や「必要」がなくなったときには勾留は取り消されるというわけですね。

勾留取消しになる場合

たとえば示談が成立した場合は罪証隠滅のおそれ(刑事訴訟法60条1項2号)が減じるので勾留取消しを請求することを考えるべきです。

そのほか、留置所で違法な捜査(暴力など)が行われている場合も勾留取消しを検討すべきでしょう。

あくまで勾留される時点では要件が充足していたが、その後、捜査官の態様や弁護人側の活動などで勾留の「理由」や「必要」がなくなった場合に勾留取消しができるというわけです。

〈違法捜査が行われていた場合の対応〉
捜査官側で暴力等の違法な取調べ等が行われていた場合、弁護人側はどう対応すべきでしょうか?

その対応としては
①勾留取消し(刑事訴訟法81条1項)
②移送命令(刑事訴訟法施行規則80条)

を考えることになるでしょう。

②移送命令とは、刑事訴訟法施行規則80条1項では「検察官」について書かれています。

(被告人の移送)
第八十条 検察官は、裁判長の同意を得て、勾留されている被告人を他の刑事施設に移すことができる。

しかし、判例上、裁判官も移送命令をすることができるとされています。

そのため、弁護士としては、裁判官に「移送命令を出してください!」という職権による移送命令の申立てをするというわけです。

そのほか、あざ等がある場合には

③証拠保全(刑事訴訟法179条1項)

をすることも考えられますね。このように刑事訴訟法は検察官側・裁判官側の視点でみた問題点でしたが、弁護士側からみるといろいろな対応がまた出てくるわけです。これが刑事実務基礎の醍醐味でもあります。

勾留執行停止

勾留執行停止は緊急事態

勾留の要件はそろっていた。その後も勾留の理由や必要は備わっている。

けれど、一時的に勾留を停止させてほしい

という要望に応えるための対応として、勾留執行停止があります。

緊急事態に一時的な身柄釈放が必要な場合に使われるものです。

よくあるのは、冠婚葬祭や受験などです。

これって保釈とは違うんですか?

法上向
法上向

いい質問だね!

保釈は起訴された被告人に対するものだよね。被疑者の勾留では保釈は認められていないんだよ。

ちなみに、勾留執行停止は被疑者でも被告人でも関係なく認められるよ!また、勾留執行停止では保釈金は不要だぞ!

勾留執行停止の条文は刑事訴訟法207条1項・95条

第九十五条 裁判所は、適当と認めるときは、決定で、勾留されている被告人を親族、保護団体その他の者に委託し、又は被告人の住居を制限して、勾留の執行を停止することができる。

刑事訴訟法207条1項を準用しないといけないのは、被疑者に対してのものだからです。

そして刑事訴訟法95条1項は「裁判所」の対応として勾留執行停止を規定しています。そのため、「勾留執行停止発動を促す」というのが正しい言い方でしょう。

被疑者の肉親が冠婚葬祭の場面で、一時的に被疑者を解放したい場合に勾留執行停止を裁判所に促すわけです。

これは比較的認められやすいといえます。一方、冠婚葬祭程度では勾留取消し(刑事訴訟法207条1項、87条1項)は到底認められないでしょう。

まとめ

以上、勾留に対する弁護士の対応をみてきました。ポイントはどのような場面でどのような対応をとるかです。

①理由が知りたい→勾留理由開示(刑事訴訟法207条1項、刑事訴訟法82条1項)
②勾留要件不充足→準抗告(刑事訴訟法429条1項2号)
③勾留要件消滅→勾留取消し(刑事訴訟法207条1項、刑事訴訟法87条1項)
④緊急事態による一時的解放→勾留執行停止(刑事訴訟法207条1項、刑事訴訟法95条)

どのような場面でどのような条文を用いてどのような対応をとるのか、

しっかりと意識して覚えていきましょう!

読んでくださってありがとうございました。ではまた~。

参考文献

刑事実務の基礎は、よりよい参考書がほとんどありません。

予備校本で勉強するのがよいでしょう。辰巳のハンドブックは予備試験口述の過去問まで載っているので、口述試験対策という意味でもお勧めします。

正直これ以外で改正された刑事訴訟法に対応した良い参考書は今のところないと思います。

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