特別の犠牲って何?憲法29条3項の損失補償を教えます!【行政法その12】

損失補償行政法

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法上向
法上向

はじめての行政法シリーズも終盤だな。ここで毛色を変えて損失補償について考えてみよう。

 

 

損失補償って行政法の規定の中にありましたっけ……

法上向
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実は損失補償は主に憲法29条を使うんだ。けれど国家賠償との関係で行政法の分野の中に含まれることが多いってわけさ。

損失補償は行政法で最も手薄になりやすい分野だと思います。しかし,国家賠償と並んで意外と問題に出る分野でもあります。今回はそんな損失補償の考え方についてみていこうと思います。

損失補償のポイント

損失補償は適法な行政行為で問題になる分野です。もし違法であれば国家賠償法を用いることになります。まずはこの点をしっかり理解しましょう!

適法な行政行為だけど,特別な犠牲のために損失を得たら国等から補償してもらえるとされています。これを損失補償と言います。

みんなのために自分が犠牲になる,ドラゴンボールの餃子(チャオーズ)のような奴を補償してあげるのが損失補償というわけです(違法な行為の被害者として国賠になりそうですが(汗))。

損失補償のポイントは以下になります。

①損失補償の請求方法について理解する。
②特別の犠牲の考え方について押さえる。
③損失補償の内容について押さえる。
基本書等では意外とわかりづらく書かれているので,最低限の事柄をわかりやすく伝授できるよう頑張ります!

損失補償の請求方法

見出しを付けましたが,この項目はすぐ終わります。判例もほぼ決まっており学説の対立は省くからです(笑)。

損失補償が問題になりそうな事案では,まず法律に損失補償の規定が置かれていないかを確認しましょう。

置かれていたらラッキーと思ってください。その規定の要件に沿って検討すれば大丈夫です。その規定に基づいて損失補償を請求できます。

問題は置かれていない場合です。損失補償の規定はないけれど,あきらかに特別な犠牲を払っている餃子(チャオーズ)のような奴がいる。どうしてもこいつを補償してあげたい。その場合は,憲法29条3項により損失補償を請求します。

第二十九条 財産権は、これを侵してはならない。
○2 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。
○3 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。

なかなかないやり方ですよね。基本的に憲法から請求できることはないですが,判例は損失補償の場合に憲法から請求することを許容しました(最判1968年11月27日参照)。しかし,今までこれが認められた判例はないことは知っておくとよいと思います。使えるけど実際に使われた例はないということです。謎多き方法ですね!

損失補償が問題になる場合は,当該行為の法規に損失補償の規定がないかを確認する。
損失補償の規定がなくても,憲法29条3項より損失補償が認められる可能性がある。

特別の犠牲の考え方は特定と強度

よくわからない特別の犠牲

損失補償は特別の犠牲と言える場合に請求できるとされています。

では特別の犠牲はどう判断すればいいのか?

よく言われているのが行政行為が特定人を対象にしたもので財産権の本質を侵害するものかどうかで判断するというものです。

特定されているか

特定人を対象にしたもの,というのはわかりやすいと思います。

みんなのためにお前だけ犠牲になっている,そういう場合だったら補償してやってもいいぜ

という国側の気持ちが感じられます(笑)。

侵害が強いか

難しいのは財産権の本質を侵害するものかどうかです。これは当該行為の攻撃力が強い,相手方の戦闘力が高い場合をイメージしてもらえばわかりやすいと思います(逆にわかりにくい笑)。

侵害が強いから特別に補償しなきゃね。

ということです。ただし,前述のとおりあくまでこの行為というのは適法な行為です。違法な行為であれば国家賠償法の方が適用される点には注意してください。餃子(チャオーズ)の例だと相手方の戦闘力は高いが相手方の攻撃は正義にのっとっている場合ですね(よくわかりませんね笑)。

いや,本質とか侵害が強いとかよくわかりません。

 

法上向
法上向

それならば,消極目的と積極目的で考えてみようか。

この強度の問題は消極目的積極目的の問題に置き換わることもあります。

消極目的の行為とは国家が最低限のために行う行為のことです。衛生上の行為や警察上の行為のことが多いです。

積極目的の行為とは国家がやる気を出してやらなくてもいいことをやった行為です(笑)。福利厚生,社会活性化のための行為と思っておけば大丈夫でしょう。

積極目的の場合はやらなくてもいいことをやったのですから,それによって犠牲になった者は特別の犠牲を受けたといえ,損失補償の請求が認められやすくなります

特別の犠牲のまとめ

以上,特別の犠牲のためには特定人を対象にしていること,侵害が本質(強度)であることが必要だと説明しました。

上記に説明した要件が2つそろって初めて特別の犠牲と認められる点は注意が必要です。どちらか一方だけそろっていても特別の犠牲は認められません。

特別の犠牲は,①特定人に対してか②侵害が強度かどうかで考える。侵害が強度かについては,積極目的か消極目的かどうかも判断要素となりうる。

損失補償はどれくらい?

では補償はどれくらい得られるでしょうか?よくここで完全補償説と相当補償説が議論がされていますが省きます。ここではわかりやすさを追求して結論だけを追っていきましょう!

土地の場合は他と同程度

土地の損失補償の場合(よくあるのが農地改革や土地収用法での損失)は同程度の他の土地の価格が基準になります

先ほど言った完全補償説相当補償説の対立も結局は同程度の土地の価格を基準にするということなのであまり深く考える必要はありません。

代替地が買える程度の保障をしてあげればよいのです!

土地以外は難しい。基本的にはコスト

土地以外の損失補償の基準は難しいです。基本的にはその行為によって支払った損害のみについて補償が認められ,逸失利益(将来に向けた損害)は補償対象外と言われています。

土地の場合は同程度の土地の価格が補償内容になる。土地以外の場合は,基本的にその行為によって支出したお金が補償内容になると思われる。

まとめ

以上,損失補償を見てきました。損失補償は特別の犠牲の考え方さえ押さえれば後はノリと勢いでいけます(笑)。これに加えて判例の知識を身に着ければ完璧です。

再度繰り返しの確認ですが,損失補償は適法な行為について問題になるものです!違法な行為であれば国家賠償が問題になる点は注意をしてください。

下に行為が違法な場合の検討になる国家賠償についての記事を載せておきます。参考にどうぞ!

読んでくださってありがとうございました。ではまた~。

参考文献

記事の目的上,とても簡潔にまとめているので,もっと深めたい方は以下の基本書を参考にしてください。わかりやすいのでおすすめです。

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