改正民法対応!訴訟担当をわかりやすく!【民事訴訟法その5】

訴訟担当民事訴訟法

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法上向
法上向

訴訟行為を行えるのは,当事者と法定代理人と訴訟代理人だったね。

訴訟代理人は基本的に弁護士でしたよね。

法上向
法上向

しかし,自分の訴訟ではないけれど,特別に訴訟行為をすることが許されている人たちがいるんだ。訴訟担当という場面だね。今回はこの訴訟担当についてみていこう。

通常,訴訟はその訴訟物の当事者・法定代理人・訴訟代理人によって行われます。しかし,民事訴訟では,訴訟物に直接かかわらない人にも,本来の当事者の代わりに特別に「当事者」として,訴訟行為をすることを認められてます。これを訴訟担当といい,その者は訴訟担当者といいます。

今回はこの訴訟担当について根本から説明していきたいと思います。

訴訟担当のポイント

民事訴訟法上に明確な訴訟担当の規定はありません。なので少しやっかいです(汗)。

訴訟担当はまず法定訴訟担当任意的訴訟担当に分けられることを理解してください。多くの場合議論があるのが任意的訴訟担当です。またよく誤解されがちな訴訟担当法定代理・訴訟代理の違いについての解説していけたらいいなー,と思います。

①法定訴訟担当について理解する。
②任意的訴訟担当について理解する。
③訴訟担当と法定代理・訴訟代理の違いについて理解する。
それではみていきましょう。

法定訴訟担当は法令に基づく担当

法定訴訟担当とは法令の規定に基づくなどして訴訟担当が認められている場合です。法律から「このような場合はお前が訴訟担当として訴訟行為をせよ」と規定されている場合というわけです。法律が命令しているイメージを持つとわかりやすいと思います。指差し

代表例は債権者代位訴訟(民法423条)

よく問題に出されるのが債権者代位訴訟です。債権者代位訴訟は,民法では債権総論の範囲になります。まだ民法で債権者代位を勉強されていない方は民法の方から勉強されるのをおすすめします。

とはいえ,ここで債権者代位訴訟について復習してみましょう。

この場合,債権者は債務者に代わって第三債務者に対して訴訟をすることができます。この場合,債権者を(法定)訴訟担当者,債務者を被担当者と呼びます。

任意的訴訟担当は意思に基づく担当

任意的訴訟担当は法令に従って認められるわけではありません。その担当者の意思に基づいて担当者となるタイプです。いわば自ら率先して訴訟行為をノリノリで行う場合です。

もう大丈夫!私が来た!」というオールマイトのような存在をイメージしてみてください。ヒーロー

こうなってくると,いい子ぶるヒーローがいっぱい登場することが予想されます。つまり,「私が訴訟をしてあげるよ」というようにあらゆる訴訟を訴訟担当として活動する者たちです。このようなことを認めてしまうと何が起こるか想像できますか?

弁護士代理の原則(民事訴訟法54条)の潜脱になってしまうのです。いい子ぶるヒーローが増えると正当な許可を得ているヒーロー(弁護士)が困るというわけですね。

判例の見解

これは判例でも問題点が指摘されおり,長年,任意的訴訟担当は認められにくい状況でした。特に法律に何の根拠もない任意的訴訟担当(自分の意思に基づく訴訟担当)は認められにくかったです。

しかし,判例では一定の条件のうえ,任意的訴訟担当を認める見解が登場します。簡単に判旨をまとめてみます。

弁護士代理の原則を回避・潜脱するおそれがなく,任意的訴訟担当を認める合理的必要がある場合
上記場合には,任意的訴訟担当を認めてもいいかなー,っていう感じのノリで書かれている判例があるのです。

 

弁護士代理の原則を回避・潜脱するおそれがなく」の部分は任意的訴訟担当が謙抑的である根拠を示したにすぎないので,実質的要件としては「合理的必要がある場合」となるでしょう。

任意的訴訟担当が認められる合理的必要とは

では合理的必要とはどのような場合でしょうか?

これについては学説上さまざまな意見が述べられています。わかりやすい見解を一つあげるとするならば

①授権があること
②担当者と被担当者に利益保護の実体的関係があること

といった感じになるのではないでしょうか。

なお,①と②は多くの場合は重なります。重要なのは,被担当者と担当者の間に何の関係性もないような場合には認められないという点です。

この例として多いのは環境保護団体などです。環境保護団体は被担当者(環境汚染で苦しむ人たち)の代わりに訴訟をやりたくて仕方がないと思いますが,環境保護団体と環境汚染で苦しむ人たちを結び付ける実体法上の権利関係がないのでこれは認められないことになります。

環境保護

法定代理・訴訟代理と訴訟担当の違い

ここで意外と法定代理訴訟代理訴訟担当の関係性が混ざって違いがよく理解できなくなってしまうという事態が発生することがあります。

実際自分もそうでした。

まず法定代理・訴訟代理訴訟担当の効果の違いから見てみましょう。

判決効の及ぶ範囲

まずは民事訴訟法115条1項をじっと見てみましょう。

(確定判決等の効力が及ぶ者の範囲)

第百十五条 確定判決は、次に掲げる者に対してその効力を有する。

一 当事者
二 当事者が他人のために原告又は被告となった場合のその他人
三 前二号に掲げる者の口頭弁論終結後の承継人
四 前三号に掲げる者のために請求の目的物を所持する者
2 前項の規定は、仮執行の宣言について準用する。

1号が当事者となっています。2号が当事者が他人のために原告又は被告となった場合のその他人です。

さて,法定代理・訴訟代理の場合の本人=代理されている人(未成年など)は1号と2号どちらの適用を受けるでしょうか。

代理はあくまで本人に効果が帰属するので本人は当事者のままです。よって1号により判決の効力が及ぶことになります。(代理人自身には効力は及びません)

次に,訴訟担当における被担当者について考えてみましょう。1号と2号どちらの適用を受けるでしょうか。

訴訟担当は代わりに「当事者」として訴訟をやってもらう場合でしたよね。となると被担当者は当事者ではないことになります。よって被担当者は2号の適用を受け,判決の効力が及ぶことになるのです。(訴訟担当者自身には1号により効力が及ぶ)

ポイントは被担当者・本人(被代理人)

つまり,訴訟担当でも訴訟代理(法定代理)でも効果,訴訟行為自体にそれほど大きな違いはありませんが,判決の効力が及ぶ範囲,被担当者や本人にも効力が及ぶことを示す適用条文が異なることになります。

これを逆に言えば,訴訟担当は被担当者が自身が訴えていなければ「当事者」にならないが,訴訟代理(法定代理)では本人も自身が訴えているので「当事者」であるということになります。

ただし,これは被担当者自身や本人が訴訟行為を行えないという意味ではありません。被担当者や本人は自身の権利で当然に訴訟を行うことができるので,訴訟無能力者(未成年・成年被後見人)ではい限りは自分自身で訴訟を行える(なろうと思えば当事者になれる)のが一般的です。この点もしっかり押さえておきましょう。

まとめ

訴訟担当は訴訟代理や法定代理と違って,少しイメージがしづらい概念かもしれません。代わりに訴訟を行ってくれる人です。「仰せのままに」の服従者の場合が法定訴訟担当。「私が来た!」のヒーローの場合が任意的訴訟担当。というイメージをもつとわかりやすい?でしょう。

①訴訟担当は民事訴訟上の明確な規定がない。
②法定訴訟担当は「法令に基づく場合」であり,任意的訴訟担当は「意思に基づく場合」である。
③任意的訴訟担当は,弁護士代理の原則の潜脱のおそれがあるため,謙抑的である必要があり,授権や実体法上の関係により限定されるという見解が有力である。
④法定代理・訴訟代理と訴訟担当の違いは本人や被担当者を見るのがポイントである。訴訟担当は訴訟担当者自身が「当事者」となっている。
以上になります。読んでくださってありがとうございました。ではまた~。

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