民法改正対応!債務引受とは?わかりやすく解説【債権総論その13】

民法

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法上向

債務引受について解説していこうと思う!債務引受について何か知っているかな?

あの、ほとんど出題されない分野のことですよね。勉強しなくてもいいんじゃないんですか?

法上向

そうでもないんだよ。債務引受は実は会社法の箇所でも登場したりする。債務債権関係というのは法律のあらゆる場面で登場するから、基本を民法でしっかり押さえておく必要があるんだ。

債務引受は民法の試験としてはあまり出題されない分野だと思います。同じような規定の債権譲渡の方が出題されやすいです。

しかし、債務引受は会社法の事業譲渡や会社分割のような場面で登場するものです。債権債務関係は法律において様々な場面で登場します。債務引受も同様です。

民法で基本的な考え方を知って理解しておくことが法律の体系を作るうえで重要でしょう。そのため、今回は債務引受の基本的な考え方を解説していこうと思います。

債務引受のポイント

債務引受はいうなれば、債務の移転です。債権譲渡が債権の移転であったとすると、その逆になります。

ただし債務引受には2パターンあり、併存的債務引受免責的債務引受があります。この2つの違いをしっかり押さえる必要もあります。

さらに、免責的債務引受は担保の移転をどうするのか、という論点もあります。

内容自体は多くなりません。しっかり整理して理解してもらえるよう、頑張りたいと思います!

①併存的債務引受の要件・効果を知る。
②免責的債務引受の要件・効果を知る。
③免責的債務引受の際の担保の処理方法について理解する。

それでは見ていきましょう。

併存的債務引受の要件・効果

併存的債務引受とは?

併存的債務引受とは、債権者が債務者に対して債権を持っている際に、引受人も債務者になることをいいます。併存的債務引受の場合、元の債務者は債務者として維持され、結局、引受人と債務者が2人で債務を負担することになります。

免責的債務引受のように、引受人のみが債務を負担するわけではないという点に注意してください。

図で表すとすると下のようになります。

併存的債務引受の要件(民法470条2項・3項)

ではこのような併存的債務引受の要件(どうなれば併存的債務引受が認められるのか)をみてみましょう。

要件を確認する際には、条文から見ます。併存的債務引受の条文は民法470条2項3項です。

(併存的債務引受の要件及び効果)
第四百七十条 
2 併存的債務引受は、債権者と引受人となる者との契約によってすることができる。
3 併存的債務引受は、債務者と引受人となる者との契約によってもすることができる。この場合において、併存的債務引受は、債権者が引受人となる者に対して承諾をした時に、その効力を生ずる。

条文をよく見ると2パターンあることがわかると思います。

〈併存的債務引受の要件パターンA〉
①債権者と引受人との間の契約

〈併存的債務引受の要件パターンB〉
①債務者と引受人との間の契約
②債権者の承諾

パターンAとパターンBのどちらかを満たせばよいというわけです。

わかりやすく言えば、必ず債権者を通すことが必要というわけですね。

併存的債務引受の効果

連帯債務関係になる

併存的債務引受の場合はいわば、連帯債務のような状態になっています。

連帯債務については以下の記事が参考になりますので、詳しく知りたい方はご覧ください。

わかりやすく言えば、引受人も債務者と同様の債務を持ち、引受人が支払った場合には、引受人から債務者へ求償権を持つということです。

なお、併存的債務引受の場合には連帯債務になるということは、民法470条1項からわかります。

(併存的債務引受の要件及び効果)
第四百七十条 併存的債務引受の引受人は、債務者と連帯して、債務者が債権者に対して負担する債務と同一の内容の債務を負担する

しっかり理解していきましょう!

引受人の反論

併存的債務引受の場合には、引受人は債務者の事情を債権者に主張することができます。これは債権譲渡と同じようなルールです。民法471条を見てみましょう。

(併存的債務引受における引受人の抗弁等)
第四百七十一条 引受人は、併存的債務引受により負担した自己の債務について、その効力が生じた時に債務者が主張することができた抗弁をもって債権者に対抗することができる
2 債務者が債権者に対して取消権又は解除権を有するときは、引受人は、これらの権利の行使によって債務者がその債務を免れるべき限度において、債権者に対して債務の履行を拒むことができる

債権譲渡の場合と同様であるということを感じ取ってください!

免責的債務引受の要件・効果

免責的債務引受とは?

免責的債務引受とは、元の債務者が債務を免れ、引受人のみが債務を負担するという形です。これは債権譲渡の逆パターンとなります。

図のような形です。

こんなことをやってくれる場合なんてあるのか?

と疑問に思うかもしれませんが、引受人と債務者との間で契約が結ばれ対価が支払われる場合や、引受人が債務者の親などで子どものために債務引受をしたい場合などに使われるとされています。

また、会社分割や債権譲渡の際にはよく問題になる部分です。「会社分割で免責的債務引受をした場合に分割会社の債権者は何も異議が言えなくなるという問題がある」というのを会社分割の箇所で学習したと思います。

このように意外と使われるものなのです。

免責的債務引受の要件(民法472条2項・3項)

要件を確認したくば、条文を見ろ!

です。免責的債務引受の要件は民法472条2項・3項を見ることになります。

(免責的債務引受の要件及び効果)
第四百七十二条 
2 免責的債務引受は、債権者と引受人となる者との契約によってすることができる。この場合において、免責的債務引受は、債権者が債務者に対してその契約をした旨を通知した時に、その効力を生ずる。
3 免責的債務引受は、債務者と引受人となる者が契約をし、債権者が引受人となる者に対して承諾をすることによってもすることができる。

要件は以下のようになります。

〈免責的債務引受の要件パターンA〉
①債権者と引受人との間の契約
②債権者による債務者への通知

〈免責的債務引受の要件パターンB〉
①債務者と引受人との間の契約
②債権者の承諾

ポイントは、併存的債務引受の場合にはパターンA(債権者と引受人との契約)があれば債権者が知ることまでは必要なかったが、免責的債務引受の場合は債権者が知ることが必要になるという点です。

なお、パターンAの②の要件は、債権者からの一方的な通知でよく、債務者からの承諾の意思表示は必要ないという点は注意してください。

さらに、パターンBでも②債権者の承諾が要求されている点も理解しておきましょう。免責的債務引受の場合に債権者は知らなくても変わりないと思うかもしれませんが、引受人が債務者より弁済能力が低い場合など、免責的債務引受によって債権者が害されるおそれがあります。

そのため、併存的債務引受と同様に、債権者の同意までが必要とされているのです。

免責的債務引受の効果

債務者は債務を免れる

これは免責的債務引受の特徴であるから当たり前です。民法472条1項に規定されています。

(免責的債務引受の要件及び効果)
第四百七十二条 免責的債務引受の引受人は債務者が債権者に対して負担する債務と同一の内容の債務を負担し、債務者は自己の債務を免れる

債務者は自己の債務を免れるということです。債権譲渡と逆で、債務者が代わるパターンというわけです。

なお、連帯債務関係に立つわけではなく、完全に引受人へと債務が移転されます。リスクはすべて引受人が負うことになります。そのため、引受人から元の債務者への求償権はありません民法472条の2にもそのことが規定されています。

(免責的債務引受における引受人の求償権)
第四百七十二条の三 免責的債務引受の引受人は、債務者に対して求償権を取得しない。

引受人の反論

債権譲渡と同様に、引受人は債務者の事情を主張することができます。この点は併存的債務引受と変わりません。

民法472条になります。

(免責的債務引受における引受人の抗弁等)
第四百七十二条の二 引受人は、免責的債務引受により負担した自己の債務について、その効力が生じた時に債務者が主張することができた抗弁をもって債権者に対抗することができる。
2 債務者が債権者に対して取消権又は解除権を有するときは、引受人は、免責的債務引受がなければこれらの権利の行使によって債務者がその債務を免れることができた限度において、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。

免責的債務引受の担保の移転の処理

担保の移転の条文は民法472条の4

最後の免責的債務引受の場合に担保があった場合の処理方法についてみていきましょう。条文は民法472条の4になります。

(免責的債務引受による担保の移転)
第四百七十二条の四 債権者は、第四百七十二条第一項の規定により債務者が免れる債務の担保として設定された担保権を引受人が負担する債務に移すことができる。ただし、引受人以外の者がこれを設定した場合には、その承諾を得なければならない。
2 前項の規定による担保権の移転は、あらかじめ又は同時に引受人に対してする意思表示によってしなければならない。
3 前二項の規定は、第四百七十二条第一項の規定により債務者が免れる債務の保証をした者があるときについて準用する。
4 前項の場合において、同項において準用する第一項の承諾は、書面でしなければ、その効力を生じない。
5 前項の承諾がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その承諾は、書面によってされたものとみなして、同項の規定を適用する。

まず、大前提として、民法472条の4第1項より、債権者は担保を移すことができるという点を確認しましょう。債権者が債務者に対して持っている担保をすべて引受人へと移すことができるわけです。

この場合、債権者から引受人の担保として、元の債務者についていた担保が使われることになります。

さらに、ただし書にも注意です。ただし、引受人が債務者の担保権を持っていない場合には、その者の承諾を得る必要があるといいます。

たとえば、債務者の担保として物上保証人が設定されていたとしましょう。この場合、引受人へ免責的債務引受をして、かつ担保も移転したい場合には物上保証人の承諾が必要というわけです。

さらに、保証人の場合も同様に扱われるといいます(民法472条の4第3項)。債務者に保証人がいた場合に引受人に移転する場合には、保証人の承諾を書面でしなければならないというわけですね(民法472条の4第3項、4項)。

まとめ

債務引受についてみてみました。条文もかなりわかりやすく作られているので、要件さえ間違えなければ大丈夫だと思います。

もう一度、要件を再掲しておきますので、確認してください。

〈併存的債務引受の要件パターンA〉
①債権者と引受人との間の契約

〈併存的債務引受の要件パターンB〉
①債務者と引受人との間の契約
②債権者の承諾

〈免責的債務引受の要件パターンA〉
①債権者と引受人との間の契約
②債権者による債務者への通知

〈免責的債務引受の要件パターンB〉
①債務者と引受人との間の契約
②債権者の承諾

読んでくださってありがとうございました。ではまた~。

参考文献

債権総論では初学者にもおすすめのとてもわかりやすい基本書があります。有斐閣ストゥディアの債権総論です。

改正民法に完全対応ですし、事例や図解、章ごとのまとめもあるのでとてもわかりやすい基本書になっています。ぜひ読んでみてください。

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