民法総則一番の山場はどこだと思う?
代理です!
そうだね,代理は問題にでやすいし,改正で結構変わったから要チェックだね。
今回から3回分かけて,代理編に突入です。まずは手始めとして有権代理です。有権代理は,まぁ普通の代理ってことです。ここは簡単なので,サクッと扱いましょう!
有権代理のポイント
有権代理は,すべての代理の基本形です。すべてはここからスタートします。
②利益相反行為について理解する。
③代理権濫用について押さえる。
④代理行為の瑕疵について理解する。
代理の要件は3つだけ!
有権代理は民法99条1項に規定されています。
(代理行為の要件及び効果)第九十九条 代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる。
これを分解していきます。
ちょっとわかりにくいですが,
その権限→代理権,本人のためにすることを示して→顕名,した意思表示→(ちょっと強引ですが)法律行為
この3つが有権代理の要件だとされています。有権代理とは普通の代理の形式,いわば代理の基本形です。
つまり,本人(代理権を渡す人のことです)から代理権が渡されて,代理人が相手方に本人の代理であることを示して(顕名),法律行為をすれば,代理が成立することになります。
次に,効果について確認してください。「本人に対して直接にその効力を生ずる」とは,代理人と相手方の契約の効果が本人と相手方に帰属する=実質的に本人と代理人の法律関係になるということです。この本人との部分は注意です。代理人には効果は帰属しくなるという点に注意してください。
なお,代理は考えやすくするために,法律行為→顕名→代理権を順で検討することをおすすめします。法律行為が成立しなければ顕名や代理権を検討する必要がなくなり楽だからです。
代理が認められると,本人と相手方に効果が帰属する。
利益相反は代理人と本人の利益不利益を考える
自己契約や双方代理はダメというのが民法108条1項に書かれていますが,これはなんとなくわかると思うので省略します。
意外と,特に家族法との関係で問題になるのが,民法108条2項の利益相反代理です。これはちょっと考えてみましょう。
(自己契約及び双方代理等)第百八条2 前項本文に規定するもののほか、代理人と本人との利益が相反する行為については、代理権を有しない者がした行為とみなす。ただし、本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。
よく教科書には利益相反が外形説であると述べられていますが,私は習いたてのころ外形説がよくわかりませんでした。「外形」といわれてもイメージできません!
なので,こう考えてみましょう。
代理人自身は利益あるか?ないか?本人自身は利益あるか?ないか?
代理人自身に利益があり,本人自身が不利益を負うならば,それは利益相反になるのです。
たとえば,代理人自身が自分の借金を返すために土地の売買の代理権が与えられていることを利用して,本人の土地を売ってしまった場合は利益相反行為となります。一方で,代理人が恋人の借金を返すために土地の売買の代理権が与えられてることを利用して,本人の土地を売ってしまった場合は利益相反とはなりません。確かに本人は不利益ですが,利益をうけるのは恋人であり代理人ではないからです。
民法107条の代理権濫用はあくまで代理権の範囲内
次に民法107条を見てみましょう。改正で新しく入った条文ですね。
(代理権の濫用)第百七条 代理人が自己又は第三者の利益を図る目的で代理権の範囲内の行為をした場合において、相手方がその目的を知り、又は知ることができたときは、その行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。
「代理人は自己又は第三者の利益を図る目的で」の部分はわかります。問題は次です。「代理権の範囲内の行為をした場合」ここに注意してほしいのです。
つまり,107条が適用される場合はあくまで代理権の範囲内の行為をしていることが前提になります。ここを忘れることが多いので注意しましょう。
けど具体的に想像しにくいですよね?
よって,論文対策も兼ねてこう考えるとわかりやすくなると思います。
107条が適用されるので多い場合は,上記利益相反行為に当たりそうで当たらない場合です。つまり,代理人が恋人の借金を返すために本人の土地を売ってしまった場合のような場合です。利益相反は外形的に判断するのでこの場合利益相反に当たらないことは確認しました。しかし,一般的にみて代理人はよくないことをしていますよね。
ここで代理人に成敗を与えるために,民法107条を使ってあげます。「第三者(恋人)のため」「代理権の範囲内(土地の売買)」の範囲内で代理行為を行っているので要件は満たします。つまり,民民法107条より,このような場合も代理が認められないようにできたわけです。
「この代理人悪い奴だなー」と思ったら以上の手順で判断してみてください。
もちろん,民法107条は別に利益相反とは関係なく,要件に該当しさえすれば認められるので上記はよく出てくるパターンというだけなのでその点はご了承を。たとえば表見代理などで表見としての代理権が仮に認められた後,権限濫用(民法107条)を検討するパターンもよくあります。
民法101条の代理権の瑕疵は条文に沿え!
最後に代理による法律行為に瑕疵があった場合を考えてみます。条文が丁寧に書かれているので,それを理解していけば基本は大丈夫です。
(代理行為の瑕疵)第百一条 代理人が相手方に対してした意思表示の効力が意思の不存在、錯誤、詐欺、強迫又はある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする。2 相手方が代理人に対してした意思表示の効力が意思表示を受けた者がある事情を知っていたこと又は知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする。3 特定の法律行為をすることを委託された代理人がその行為をしたときは、本人は、自ら知っていた事情について代理人が知らなかったことを主張することができない。本人が過失によって知らなかった事情についても、同様とする。
条文に「その事実の有無は,代理人について決するものとする」とありますが,恥ずかしながら私はこの意味がまったくよくわかりませんでした。意外と基本書にも載っていないんですよね(たぶん,当たり前だからですが…)。代理人について決するとは,代理人基準という意味,ただそれだけです。
101条で言いたいのは結局,法律行為の瑕疵で主観面が問題になるときは,実際に契約したのは代理人だから代理人の主観面で考えてよね!本人の主観面をかんがえちゃだめだよ。と言っているだけにすぎないのです。
ただし,3項で本人が知っていた事実がある場合には,本人は「あのときの代理人は善意でしたー(私は知ってたけどね笑)」というような主張はできないわけです。これはさすがに本人いかんでしょ,という配慮が働いていることになりますね。
この条文は覚えるのではなく,条文をみてきちんとどういうことを言っているのかがわかるようになれば大丈夫だと思います。長さのわりに影が薄いやつです。
まとめ
有権代理を見てきました。有権代理は要件以外は実際問題として出ることは少ないと思いますし,利益相反は家族法でしっかりやることになると思います。代理権濫用は会社法では出てきますが,民法ではあまり出てきてない印象です。なので,この記事で最低限覚えてほしいことは以下だけです!
これは次回や次々回の無権代理,表見代理で非常に重要視されるので忘れないようにしてください。以上読んでくれてありがとうございました。ではまた~。
参考文献
記事の目的上,とても簡潔にまとめているので,もっと深めたい方は以下の基本書を参考にしてください。改正民法対応でわかりやすいのでおすすめです。