今回は前回から引き続き、契約の効力についての記事だぞ。
今回は第三者のためにする契約ですよね。試験にもあまり出ないしいまいちよくわかりません。
一般的に契約はお互いの債権によって成り立っています。そのため、その債権の効力を考えれば契約の効力を理解したことになるのです。
民法で規定されている「契約の効力」というのは、債権単独では認められない、契約独自の効力のことです。
同時履行の抗弁・危険負担・第三者のためにする契約
が主となるでしょう。このうち、同時履行の抗弁については前回触れました。
危険負担は難しいので別の箇所で扱うことにして、今回は第三者のためにする契約について書いていこうと思います。
第三者のためにする契約は試験ではあまり出ませんが、契約についての考え方を理解するにはいい素材です。短答対策もかねて、図も交えて簡単に確認していこうと思います。
第三者のためにする契約のポイント
そもそもの前提を押さえていない方が多いと思うので、繰り返し述べておくと、
契約の効力は「単独の債権とは異なる、契約独自の効力」について書かれている箇所です。
そのため、その契約の効力の箇所に書かれている、第三者のためにする契約は
契約があること
が前提となります。
この点を理解したうえで、第三者のためにする契約について知っておきたいポイントを整理していきます。
①第三者のためにする契約は「契約の効力」の箇所に規定されている意味を理解する。
②第三者のためにする契約を条文から理解できるようになる。
第三者のためにする契約
第三者のためにする契約とは?
第三者のためにする契約とは、契約から生じる権利を第三者に直接帰属させることを目的とする契約のことを言います。
たとえば、AさんとBさんが売買をして、目的物の引渡しはCにするような場合です。
おじいちゃんが孫のプレゼントのためにぬいぐるみを買って、その引渡しは孫に行うよう契約する場合を想像してもらえばわかりやすいと思います。
登場人物は3人いるということはわかると思います。受益者と諾約者(給付する人)と要約者(契約の相手方)です。下図で確認しましょう。
第三者のためにする契約の条文は民法537条
第三者のためにする契約は民法537条を見ればどのようなものかがわかります。
(第三者のためにする契約)
第五百三十七条 契約により当事者の一方が第三者に対してある給付をすることを約したときは、その第三者は、債務者に対して直接にその給付を請求する権利を有する。
2 前項の契約は、その成立の時に第三者が現に存しない場合又は第三者が特定していない場合であっても、そのためにその効力を妨げられない。
3 第一項の場合において、第三者の権利は、その第三者が債務者に対して同項の契約の利益を享受する意思を表示した時に発生する。
ポイントは
第三者は債務者(諾約者)に対して直接に給付をする権利を持つという点です(民法537条1項)。この権利は第三者(受益者)の承諾により発生する点も意識しておいてください(民法537条3項)。
もちろん、要約者と諾約者の間の契約関係は維持されるため、第三者の受益の意思表示に関わらず、要約者は損害賠償や取消しを行うことは可能です。受益者はあくまで契約によって利益を受けるだけなので直接契約自体について関わることはできません。
解除の際には受益者の同意が必要(民法538条2項)
第三者のためにする契約の特徴として、あくまで要約者と諾約者との間の契約であるとしても、要約者は受益者の承諾がなければ解除できないというものがあります。
民法538条2項を見てみましょう。
(第三者の権利の確定)
第五百三十八条
2 前条の規定により第三者の権利が発生した後に、債務者がその第三者に対する債務を履行しない場合には、同条第一項の契約の相手方は、その第三者の承諾を得なければ、契約を解除することができない。
受益者は第三者のためにする契約でめちゃくちゃ喜ぶはずです。
孫の顔を想像してみてください。
そのため第三者(受益者)の利益を無断で奪うのは相当でないから、第三者(受益者)の承諾が必要というわけですね。
諾約者の抗弁(民法539条)
また第三者のためにする契約の特徴は、第三者(受益者)が諾約者に対して直接請求権を持つことでした。
この請求に対して諾約者は要約者に対して生じる抗弁(第三者のためにする契約自体から生じる抗弁)をもって対抗することができます。民法539条を見てみましょう。
(債務者の抗弁)
第五百三十九条 債務者は、第五百三十七条第一項の契約に基づく抗弁をもって、その契約の利益を受ける第三者に対抗することができる。
抗弁としては、同時履行の抗弁や解除、取消しなどが考えられます。もちろん、これらの抗弁はもともとは第三者のためにする契約に基づく諾約者から要約者に対するものという点は注意してください。
まとめ
第三者のためにする契約のポイントは条文に書かれているということはわかっていただけたと思います。
そのうえでもう一度理解しておきたいポイントを繰り返し述べさせていただきます!
第三者のためにする契約はあくまで要約者と諾約者間の契約であるということです。
第三者(受益者)は利益を享受できるにすぎません。
たしかに、抗弁を出せたり、第三者の抗弁が必要だったり、直接請求出来たりするのはそうですが、基本的に争いになるのは要約者と諾約者との契約です。この両者間の契約があくまで「第三者のためにする契約」なのですから。
次回は、契約の効力のラスボス「危険負担」です。心してかかりましょう。
解説は以上です。読んでくださってありがとうございました。ではまた~。
参考文献
契約法について、初学者が学習しやすい本としては潮見佳男先生の『債権各論Ⅰ』をおすすめします。薄いため、最低限の知識がコンパクトにまとめられており、語り口調も丁寧語であるため、しっかり読めば理解できる流れになっています。青・黒・白と三色刷りなのでポイントも青の部分を読めばわかります。
もちろん、改正民法対応です。ぜひ読んでみてください!