民法改正対応!賃貸借契約と第三者関係(賃貸人の地位・転貸借)の論点解説【契約法その12】

民法

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法上向

いよいよ、賃貸借で一番試験問題に出やすい論点を確認していくぞ。

これまで、民法からみた賃貸借借地借家法からみた賃貸借について勉強してきましたよね。これ以外にも知っておかなければならない知識があるということですか?

法上向

そうだね。今まで見てきた賃貸借の条文や知識をフル動員して応用パターンを理解する必要があるわけさ。それが賃貸借の地位と転貸借といった論点だよ。

ここは試験に出やすいから要チェックだ!

これまで賃貸借については民法からの側面借地借家法からの側面を見てきました。

今回は賃貸借の応用形かつ試験によく出題される「賃貸借契約と第三者」という論点を見ていきましょう。初学者にとってこの分野はかなりわかりづらいです。私自身も最初はよくわかりませんでした。

しかし、理解してしまえばシンプルということに気づきます。今回は賃貸借と第三者の論点のシンプルさを皆さんに知ってもらえるような記事にしていきたいと思います!

賃貸借契約と第三者のポイント

賃貸借契約でまず第三者が登場するのは、賃貸人から第三者への目的物の譲渡です。いわゆる賃貸人の地位の移転という論点ですね。この論点について詳しくみていきましょう。

そして、賃借権の譲渡・転貸の論点に入っていきます。特に無断転貸については非常に多く論述試験の論点となるので、無断転貸について押さえておくべきポイントをしっかり意識していきましょう。

また、無断転貸ではなく適法な転貸であっても権利義務関係を正確に把握することが必要になります。

最後に賃借権に対する妨害について賃貸人はどう対処できるかどうかについて簡単に考えてみましょう。

まとめると以下のようになります。

①賃貸人から第三者への不動産の譲渡の論点を知る。
②転貸借について理解する。
③賃借権の妨害の対処法を知る。

それではみていきましょう。

賃貸借契約における不動産の譲渡

想定されている場面

まずはどういう状況での論点かを知っておく必要があります。そうでなければ試験でこの論点が聞かれていている!ということがわからないからです。

想定されているのは「賃貸人が目的物(不動産)を譲渡する場面」です。売買でも贈与でもなんでもかまいません。賃貸人の不動産所有権が第三者に移ってさえいればよいのです。

この場合に賃借人はどうなるのでしょうか?

賃借権って債権でしょ?だったら第三者が出てきたら債権関係は第三者には対抗できないから、第三者は賃借人に対して返還請求的なのができるんじゃないんですか?

法上向

そう考えるのが賃貸借の目的物の譲渡を考える最初のスタートさ。けれど民法はこれを問題視したわけ。賃借人かわいそうじゃね?って話なんだよね。

だから別立てで賃借人に対してどうにかして第三者対抗要件を認めてあげようとしたのさ。

そうか、それが借地借家法でやった対抗要件の話につながるわけですね。ようやく借地借家法と民法がつながりました。

債権の原則からいえば、第三者に対して、賃貸人と賃借人間の賃借権は対抗できません。債権は当事者間でのみを拘束するからです。

>>>債権は排他性がないことを詳しく解説した【債権総論その1】はここをチェック

そのため、目的物を第三者に譲渡されてしまえば第三者は賃借人に対して不動産を明渡請求する可能性が生じてくると考えることもできます。

しかし、民法はこれを許しませんでした。さすがに賃借人がかわいそうというわけです。そのため、賃借権を一種の物権のように捉えて対抗要件制度を設けたわけです。

ここで皆さんお気づきのとおり借地借家法の対抗要件の話につながります。

>>>借地借家法の対抗要件【契約法その11】はここをチェック

対抗要件を備えた賃借権であればどうなるのかがここでの論点です。さっそく見ていきましょう。

賃貸人の地位の移転について民法605条の2

対抗要件を備えた不動産の譲渡の場合には賃貸人の地位が移転すると規定されています。つまり第三者は目的物の所有者として物権的請求権をするのではなく、賃貸人として生きていかなければならないというわけです。

民法605条の2第1項を見てみましょう。

(不動産の賃貸人たる地位の移転)
第六百五条の二 前条、借地借家法(平成三年法律第九十号)第十条又は第三十一条その他の法令の規定による賃貸借の対抗要件を備えた場合において、その不動産が譲渡されたときは、その不動産の賃貸人たる地位は、その譲受人に移転する。

ポイントは「対抗要件」を備える必要があるというわけです。

一般的に賃借権について登記をするか(民法605条)、土地の場合には登記された建物を所有するか(借地借家法10条1項)、建物の場合には建物を引き渡すか(借地借家法31条)すれば、対抗要件は具備されます。

これをしておかないと、上記でみたように、第三者は所有者として不動産について明渡請求をすることが可能になってしまいます。

またやや細かいですが、別に売買でなくても賃借権を譲渡することで賃貸人の地位を譲ることは可能です(民法605条の3)。この場合は別に第三者は賃貸人として生きていくことをはじめから決めているので対抗要件とかの話にはなりません。

賃貸人の地位移転後の権利(民法605条の2第3項)

さて、賃借権に対抗要件が備わっていたため(多くは建物の賃貸借なので建物の引渡しが賃借人にされていたことが必要になる)、第三者は賃貸人になったとします。

この場合は賃借権が移転したとみてかまいません。第三者(新賃貸人)と賃借人とで賃貸借関係がはじまるというわけです。この際、旧賃貸人は契約関係から離脱します。地位の「移転」なのであたりまえですね。

さて第三者は賃貸人となったので賃料請求権などの賃貸借契約に基づく賃貸人としての権利を行使できるはずです。

しかし、この場合には賃貸人の地位がちゃんと移転されたことを保障するために賃貸人は所有権移転登記を備えなければならないとされています。民法605条の2第3項をみてください。

(不動産の賃貸人たる地位の移転)
第六百五条の二 
3 第一項又は前項後段の規定による賃貸人たる地位の移転は、賃貸物である不動産について所有権の移転の登記をしなければ、賃借人に対抗することができない

旧賃貸人から第三者への所有権移転登記があってはじめて、賃貸人は賃貸借関係に基づく権利を行使できるわけです。

この点は見落としがちなので注意しましょう。

賃貸人の地位移転後の義務(民法605条の2第4項)

最後に賃借人が旧賃貸人に持っていた費用償還請求権・敷金返還請求権がどうなるかを確認します。民法605条の2第4項になります。

(不動産の賃貸人たる地位の移転)
第六百五条の二
4 第一項又は第二項後段の規定により賃貸人たる地位が譲受人又はその承継人に移転したときは、第六百八条の規定による費用の償還に係る債務及び第六百二十二条の二第一項の規定による同項に規定する敷金の返還に係る債務は、譲受人又はその承継人が承継する。

ただし、やや細かいですが、必要費償還請求権は必要費を支出した時に直ちに請求できる権利なので発生しているものについては旧賃貸人に帰属します(民法608条1項)。また、敷金は、賃借人が旧賃貸人に対して負担している債務があれば敷金は当然にその債務に充当されるとされ、残額が新賃貸人に承継されるとされています。賃貸人の移転の段階でいったん清算されるというわけです。

潜在的な必要費+有益費+残敷金についての義務が新賃貸人に移転するということですね。

賃借権の譲渡・転貸

想定されている場面

想定されている場面をまず押さえます。賃借権の譲渡転貸借は文字通りの意味なのでそれほど迷わないでしょう。

賃借権の譲渡
転貸

特によく出題されるのが転貸です。以下の流れをしっかり押さえていきましょう。

無断賃借権譲渡・無断転貸は禁止(民法612条)

最初に押さえてほしいのは、無断賃借権譲渡無断転貸は禁止されているという点です。これに違反した場合、賃貸人は解除することができます。

(賃借権の譲渡及び転貸の制限)
第六百十二条 賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
2 賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。

無断転貸は許しまへんで~!」というわけです。

ただし、賃貸人も早々には解除することはできません。これは債務不履行の場合に賃貸人が早々に解除できなかったことを思い出してほしいのです。あの時なにか賃借人側から反論ができましたよね?

信頼関係破壊の法理が主張できました。無断転貸による解除の場合も同様に背信性不存在の抗弁(信頼関係破壊の法理)を使うことができるとされています。

賃貸借は簡単には解除できない、ということですね。

適法な転貸(民法613条)

賃借権の譲渡が出題される場面はほとんどないでしょう。それ以上に転貸を押さえることが大事なので転貸を重点的に解説します。

適法な転貸とは「賃貸人」の承諾がある場合の転貸のことです。承諾がある場合の関係図は以下のようになります。

賃借人=転貸人である点には注意してください。

転貸の効果については民法613条を見てみましょう。これはあくまで適法な転貸=賃貸人の承諾がある転貸であることは意識してください無断転貸の場合には民法613条は適用されません

(転貸の効果)
第六百十三条 賃借人が適法に賃借物を転貸したときは、転借人は、賃貸人と賃借人との間の賃貸借に基づく賃借人の債務の範囲を限度として、賃貸人に対して転貸借に基づく債務を直接履行する義務を負う。この場合においては、賃料の前払をもって賃貸人に対抗することができない。
2 前項の規定は、賃貸人が賃借人に対してその権利を行使することを妨げない。
3 賃借人が適法に賃借物を転貸した場合には、賃貸人は、賃借人との間の賃貸借を合意により解除したことをもって転借人に対抗することができない。ただし、その解除の当時、賃貸人が賃借人の債務不履行による解除権を有していたときは、この限りでない。

ポイントは民法613条1項です。

転借人は賃貸人に対して、賃料支払義務を賃貸借契約(原賃貸借契約)の限度で負います

たとえば賃貸人と賃借人との間で月50万円の賃貸借契約が締結され、賃貸人の承諾を得て賃借人が第三者(転借人)に対して月100万円での賃貸借契約(転貸借)を締結したとします。

この場合は賃貸人は転借人に対して月50万円の限度で賃料支払請求をすることができるというわけです。

民法613条1項イメージ

ただしあくまでも転借人の基本は転貸借契約という点は忘れてはなりません。賃貸人から転借人への権利が認められているのは例外です。

転借人から賃貸人に対して費用償還請求等の権利は持たない点に注意しましょう。転借人の基本は転貸借契約なのですから、転借人は転貸人に対して権利を行使すべきです。

また、やや細かいですが、原賃貸借が債務不履行+背信性により解除さると転借人は使用収益できなくなります。というのも原賃貸借契約がなくなれば賃借人(転貸人)が使用収益する権利がなくなる→転借人が使用収益することができなくなる(履行不能による終了)という論理の流れをとるためです。

それが現実化するのは賃貸人から転借人へ返還請求がされた時点です。この場合はもう転貸借契約が機能しなくなりますので、転借人は賃貸人の請求に応じざるを得ません。転貸借契約が履行不能により終了するというわけです。

親亀がこけると子亀がこける
原賃貸借契約が解除されると転貸借契約も終了する

という点も押さえておきましょう。

原賃貸借と転貸借の関係

賃貸借契約による妨害排除

賃借人の妨害排除(民法605条の4)

民法改正により、賃借人は対抗要件を具備している場合には、第三者に対して妨害排除請求をすることができます。賃借権は債権ですが、ますます物権化したというわけです。民法605条の4を見てみましょう。

(不動産の賃借人による妨害の停止の請求等)
第六百五条の四 不動産の賃借人は、第六百五条の二第一項に規定する対抗要件を備えた場合において、次の各号に掲げるときは、それぞれ当該各号に定める請求をすることができる。
一 その不動産の占有を第三者が妨害しているとき その第三者に対する妨害の停止の請求
二 その不動産を第三者が占有しているとき その第三者に対する返還の請求

対抗要件の具備は民法605条の2第1項の場合ですので、民法605条借地借家法10条1項借地借家法31条による対抗要件の具備が必要になります

そのほか賃借人の妨害排除

賃借人は民法605条の4より妨害排除をすることができました。そのほかの方法で賃借権を保全するために妨害排除できないかを考えてみましょう。

ちなみに賃貸人は不動産(目的物)の所有者ですから、妨害者に対しては問題なく妨害排除請求権(物権的請求権)を行使できます

ここで頭をフル回転させて何か賃借人から妨害排除できないかを考えてみましょう。

賃借権を保全するため、賃貸人の妨害排除請求権を……

そう代位行使が使えないか?という発想が出てくるわけです。

債権者代位(民法423条)の規定を使うわけです。債権者代位は無資力要件がありましたが、権利の代位行使の場合には無資力要件は必要ありません。

このように契約法は債権総論の知識が前提となります。契約法から債権が出てきて債権一般の使い方について定めたのが債権総論なので当たり前といえば当たり前ですが…。

民法605条の4ができたため、賃借人による賃貸人の代位行使が今後生きるのかわかりませんが、とりあえず現段階で余裕がある方は代位行使も判例では認められているということを押さえておくとよいでしょう。

まとめ

賃貸借契約と第三者についての論点を見てきました。いかがだったでしょうか。

重要なのは転貸です!非常によく出題されるので問題演習を積みながらしっかり理解していきましょう。私も頑張ります!

読んでくださってありがとうございました。ではまた~。

参考文献

契約法について、初学者が学習しやすい本としては潮見佳男先生の『債権各論Ⅰ』をおすすめします。薄いため、最低限の知識がコンパクトにまとめられており、語り口調も丁寧語であるため、しっかり読めば理解できる流れになっています。青・黒・白と三色刷りなのでポイントも青の部分を読めばわかります。

もちろん、改正民法対応です。ぜひ読んでみてください!

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