民法改正対応!債権譲渡をわかりやすく解説してみた【債権総論その12】

民法

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債権譲渡って対抗要件とか、第三者対抗要件とか、譲渡禁止特約とか。いまいちよくわかってないんですよねー。

法上向

なるほど、たしかに債権譲渡にはいくつかのパータンがあるからこんがらがるかもしれないね。重要なのはそれぞれの「場面」をしっかり押さえることさ。
詳しくみていこう。

債権譲渡は、対抗要件や譲渡禁止特約といったいくつもの場面が想定されたまま話が進められていくので、初学者によっては理解しづらい分野だと思います。

今回は、債権譲渡の考え方を一通り理解することを目標に、できるだけわかりやすく解説していこうと思います。

債権譲渡のポイント

債権譲渡を押さえるうえで、まず債権譲渡とは何かを理解しましょう。そのうえで、債権譲渡の対抗要件の話にすすんでいきます。

その後、債権譲渡の効果について説明し、債権譲渡禁止特約についての話へ入っていこうと思います。

①債権譲渡とは何かを理解する。
②債権譲渡の対抗要件について知る。
③債権譲渡の効果について知る。
④債権譲渡禁止特約の処理方法を学ぶ。

それでは見ていきましょう。

債権譲渡とは?

債権譲渡は文字通り、債権を譲渡することをいいます。

ここでよく勘違いされがちなのは、債務者が譲渡するのではなく債権者が譲渡するという点です。

債権者が譲渡人となって、譲渡人に債権を譲渡することで債権譲渡が完成します。このとき、譲渡人は債権者となり、債務者は変わらないことになります。

条文では、民法466条1項に規定があります。

(債権の譲渡性)
第四百六十六条 債権は、譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。

さて債権譲渡自体の話はこれだけなのですが、債権譲渡は譲渡人と譲受人との間で行われることが基本なので、債務者は知らないことになります。そのため、債務者に対抗要件を具備するかが重要になってくるのです。詳しく見ていきましょう。

債権譲渡の対抗要件

債権譲渡の対債務者対抗要件(民法467条1項)

まずは対債務者対抗要件について考えていきます。

先ほども言ったように、債権譲渡は譲渡人と譲受人との間で行われます

もし債務者に何も知らせずに債権譲渡を行ってしまうと、譲受人(新たな債権者)が債務者に弁済を求めた場合に、債務者は「お前誰~!」となってしまうでしょう。

また、債務者側が譲渡があったことを知らないので、譲渡人、譲受人どちらに弁済してよいか迷うことになると思います。

そのため、対抗要件を付けていない債権譲渡の場合、債務者は譲渡人への弁済を拒むことができるのです。

このように、譲受人が債務者に対して債権の履行を求めるためには、債務者に対する対抗要件(対債務者対抗要件)が必要になります

対債務者対抗要件の条文は民法467条1項です。

(債権の譲渡の対抗要件)
第四百六十七条 債権の譲渡(現に発生していない債権の譲渡を含む。)は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない

条文を読み解くと、

〈債権譲渡の対債務者対抗要件〉
①譲渡人の債務者への通知
②債務者の承諾

ということになります。

基本的に債権譲渡の場合には、対債務者対抗要件もセットで使うようにしましょう。

対第三者対抗要件(民法467条2項)

次に、譲渡人、譲受人、債務者以外の第三者が出てきた場面を想定してください。

よく出題されるのは、二重債権譲渡の場面や差押権者が登場する場面です。この場合は譲渡人・譲受人・債務者以外の「第三者」が登場します。

第三者が登場する場合は対債務者対抗要件では足りません。債権譲渡を第三者にも対抗させるために「対第三者対抗要件」まで必要になります。

条文は民法467条2項になります。

(債権の譲渡の対抗要件)
第四百六十七条 債権の譲渡(現に発生していない債権の譲渡を含む。)は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。
2 前項の通知又は承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、債務者以外の第三者に対抗することができない。

前項の通知・承諾に+αで確定日付のある証書を要求しているので、まとめると

〈債権譲渡の対第三者対抗要件〉
①譲渡人の債務者への通知+確定日付のある証書
②債務者の承諾+確定日付のある証書

ということになるでしょう。確定日付のある証書とは公正証書や内容証明郵便のことです。はっきりと日付の記載された文書になります。

あれ?第三者対抗要件だから、第三者に知らせる必要はないんですか?

法上向

いや、債権譲渡の場合には確定日付のある証書があれば、第三者に対しても対抗要件が備わるんだ。
第三者が債務者に聞けば債権譲渡の存在がわかるようになるし、
確定日付のある証書があることで債権譲渡の日時が偽装されるおそれもなくなるからだね。

以下、代表的な二重債権譲渡の例で考えてみましょう。

二重債権譲渡では、譲渡人・第1譲受人・第2譲受人・債務者が登場するため、通常の債権譲渡とは異なり第三者(今回は第2譲受人)が登場します。

よって債権譲渡の際には、対第三者債権譲渡の要件まで具備していないと不都合が生じる場合があるのです。

この場合に譲渡人と第2譲受人との間で対第三者対抗要件を結んだとします。つまり確定日付のある証書とともに債務者に通知or債務者からの承諾があったとします。

すると第2譲受人への債権譲渡について対第三者対抗要件が具備されたことで、第2譲受人が債権者として確定され、債務者は第2譲受人に対して弁済しなければならないことになります。

ここで注意してもらいたいのは、対債務者対抗要件では足りないということです。

もし第1譲受人への債権譲渡に対債務者対抗要件を具備していたとしても、対第三者対抗要件を具備している第2譲受人への債権譲渡の前では無力です。債務者は第2譲受人へ弁済しなければなりません。

また、第1譲受人も第2譲受人も対債務者対抗要件しか備えていない場合には債務者は好きな方へ弁済できることになります。

さらに、第1譲受人と第2譲受人とでどちらも対第三者対抗要件が具備された場合には、確定日付の先後ではなく、債権譲渡通知が到達した日の先後によって、どちらの債権譲渡が第三者に効力をもつかが決まります。この点も重要なのでしっかり押さえましょう。

つまり、債務者に強制的に自分だけに弁済させたいなら早く対第三者対抗要件を備えるべきというわけです。

なお、対第三者対抗要件を先に備えた者が債務者との関係では債権者となるので、上図の例であれば債務者が第1譲受人に弁済したとしてもそれは有効な弁済にはなりません。第2譲受人からの請求があれば弁済する必要があります。その際、債務者は第1譲受人に対して不当利得返還請求をすることになります。

さらに、繰り返しになりますが、対第三者対抗要件が必要なのは

譲渡人・譲受人・債務者以外の第三者が登場した場面

です。

常に対第三者対抗要件が必要なわけではない点に注意しましょう。

債権譲渡の効果

債務者の反論

債権譲渡によって債権が移転するのは当たり前です。そのほか、債務者が債務の履行を拒絶できる事由を持っていた場合、新債権者(譲受人)に対して対抗できるかが問題になります。

このような場面ですね。

この場合の処理については、民法468条をみてみましょう。

(債権の譲渡における債務者の抗弁)
第四百六十八条 債務者は、対抗要件具備時までに譲渡人に対して生じた事由をもって譲受人に対抗することができる。

つまり、対抗要件具備時までに生じていた事由であれば、譲渡人に対しても反論できるというわけです。ここでの対抗要件具備とは「対債務者対抗要件」です。第三者が登場していないので当たり前ですね。

反論として具体的な例としては、同時履行の抗弁権や取消権、解除、消滅時効などがあげられます。あらゆる反論が、対抗要件具備までに生じていれば、譲受人に対しても主張できます。

債権譲渡禁止特約の場合の処理

債権譲渡禁止特約とは

最後に債権譲渡禁止特約が付けられている場合の処理についてみていきます。債権譲渡禁止特約とは、債務者と債権者間で「債権譲渡を禁ずる」といった内容を付けているものです。

債権譲渡禁止特約が付いていても原則譲渡可能

まずは大原則を押さえておきます。

債権譲渡禁止特約が付いた債権を譲渡しても、その債権譲渡は原則有効です。

意外に思われるかもしれませんが、受け入れるしかありません。というのも譲受人は「債権譲渡禁止特約があるなんで知らないんだけど!」となるからです。譲受人を保護するために、民法は債権譲渡禁止特約付きの債権も原則譲渡できるとしています。

民法466条2項を確認しましょう。

(債権の譲渡性)
第四百六十六条 
2 当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示(以下「譲渡制限の意思表示」という。)をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない

譲渡禁止特約がある場合の例外

しかし、譲受人を保護しなくてもよい場合がありますよね?

そうです。譲受人が悪意や重過失がある場合です。民法466条3項で確認してみましょう。

(債権の譲渡性)
第四百六十六条 
3 前項に規定する場合には、譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対しては、債務者は、その債務の履行を拒むことができ、かつ、譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもってその第三者に対抗することができる

譲受人に悪意や重過失がある場合には、債務者は債務の履行を拒んだり、譲受人に弁済することができるというわけです。

注意してほしいのは、債権譲渡自体が無効になるわけではないということです。一応、債権者は譲受人です。ただ債務者が譲受人を債権者として「取り扱わないでもよい」というだけです。

すると、ある不都合が生じそうなのですが、わかりますでしょうか?

この不都合が想像できた方は、民法の才能があります。

債権譲渡禁止特約付きの債権であっても債権譲渡自体は有効でした。そのため、名目上は譲受人が債権者です。

このため、譲渡人は、債務者に対しては「債権者は譲受人だから弁済しないよ!」と言い、
一方で、譲受人に対しては「悪意(重過失)だから債権譲渡禁止特約により弁済しないよ!」と言う

ことができるわけです。

すると債務者は譲渡人にも譲受人にも弁済しなくてよい状況が生じてしまいます。これは明らかにおかしいですよね。

そこで、民法は、譲受人に、債務者に対して、譲受人が定める期間何に譲渡人への弁済をするように催告をする権利を与えています民法466条4項です。

(債権の譲渡性)
第四百六十六条
3 前項に規定する場合には、譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対しては、債務者は、その債務の履行を拒むことができ、かつ、譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもってその第三者に対抗することができる。
4 前項の規定は、債務者が債務を履行しない場合において、同項に規定する第三者が相当の期間を定めて譲渡人への履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、その債務者については、適用しない

つまり、譲受人は相当の期間を定めて「譲渡禁止特約を理由とするなら、譲渡人へ履行してくれ」といい、それを伝えたのに履行しない場合には「それなら俺が弁済を受ける権利をもらうわ」と言って、債務者に履行の請求をすることができるようになるのです。

この場合、債務者は履行の請求を拒絶することができません民法466条3項が意味を持たなくなるというわけです。

まとめ

以上、債権譲渡をまとめてみました。

注意してほしいポイントは、何でもかんでも対第三者対抗要件を要求しないということです。対第三者対抗要件を使うべきは第三者がいる場面、つまり二重債権譲渡や差押債権者がいるような場面です。

通常の債権譲渡の場合には対債務者対抗要件で十分なのです。

また、譲渡禁止特約が付いていたとしても、原則として債権譲渡は有効という点も理解しておいてください。譲受人が悪意・重過失の場合にだけ、例外的な処理が必要になっていきます。

解説は以上になります。読んでくださってありがとうございました。ではまた~。

参考文献

債権総論では初学者にもおすすめのとてもわかりやすい基本書があります。有斐閣ストゥディアの債権総論です。

改正民法に完全対応ですし、事例や図解、章ごとのまとめもあるのでとてもわかりやすい基本書になっています。ぜひ読んでみてください。

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