今回は勾留についてみていくぞ!主に勾留の要件だな。
勾留って予備試験で頻出の分野ですよね。ぜひわかりやすい解説をお願いします!
勾留について、刑事実務基礎の観点から解説していこうと思います。
予備試験の刑事実務基礎で頻出の分野の1つに「勾留」があります。必ず刑事実務基礎で押さえておかなければならない分野です。
今回はその「勾留」の分野をわかりやすく解説します!特に勾留の要件はしっかりと「暗記」する必要があるので注意していきましょう。
でははじめます!
勾留のポイント
勾留は要件を押さえることが第一です。要件としては、手続的要件と実体的要件の2つがあります。予備試験などの論述で問われるのは、ほぼ「実体的要件」でしょう。
そこで、勾留の実体的要件を中心に、問題でどの点を気を付けていけばよいのか、詳しく解説していくことにします!
なお、「勾留の際の弁護人の対応」というのも刑事実務基礎の分野です。この分野については次回の記事に回したいと思いますので、こうご期待!
①勾留の手続的要件を理解する。
②勾留の実体的要件を理解する。
それでは見ていきましょう!
勾留の手続的要件
勾留の要件として、一般的に想定されるのは実体的要件です。しかしながら刑事訴訟法は手続についても規定しているので、手続に違反があれば、違法収集証拠といった問題が生じます。
そのため、刑事訴訟法では常に「手続的に間違いはないか」=「手続的要件を満たしているか」を考える必要があるのです。
勾留の手続的要件と聞いてもよくわからないよ!イメージがつかないなー。
勾留の前には何が必要だい?
えぇっと…、
逮捕が必要です!そうか逮捕前置主義がありましたもんね。
そう!
「逮捕」が必要さ。
そして、時間制限があったのも覚えているかい?
そうでした!
時間制限違反があった場合には基本的に勾留は許されなかったですね!
実は、勾留の手続的要件については、すでに刑事訴訟法や刑事実務基礎第1回で学習済みな方も多いはずです。
①逮捕前置主義
②時間制限
の2つは必ず押さえましょう!
あと1つ実は要件を出そうと思えば出せるのですが、わかりますか?これがわかった人は刑事訴訟法が非常に得意な方でしょう。
逮捕→勾留の過程で逮捕に違反行為があったとします。その場合に勾留はできたでしょうか?
たしかになんか勉強したなー
と感じる方も多いはずです。
時間制限のような重大な違反が逮捕になる場合には勾留は許されない
という見解をとる人が多いと思います。これを踏まえると、「逮捕手続に重大な違反がないこと」も要件になってきそうですね。
しかしながら、上記の見解からもわかるように
「重大な違反」=「時間制限違反」ととらえるのが通説ともいえるので、結局、勾留の手続的要件は以下のように覚えておけば大丈夫だと思います。
〈勾留の手続的要件〉
①逮捕前置主義(逮捕をちゃんとしていること)
②時間制限を守っていること
時間制限については以下の図も参考にしてみてください!
勾留の実体的要件
勾留の要件は理由と必要
勾留の実体的要件を考えてみましょう。通常要件を考える際には、「条文」から入ります。
しかしながら、勾留は条文から入るとややこしいので、ここは覚えることに努めてみましょう!
〈勾留の実体的要件〉
①理由
②刑事訴訟法60条1項各号該当事実
③必要
勾留の要件は①理由②刑事訴訟法60条1項各号該当事実②必要の3つです。理由と必要があるという点では逮捕と同じです!覚えやすいですね!
以上を踏まえたうえで、条文に入っていきます。
勾留は刑事訴訟法207条1項・60条1項、87条1項
刑事訴訟法で裁判以外のことについては基本的に刑事訴訟法207条1項が準用されます。というのも刑事訴訟法は「訴訟法」という言い方からもわかる通り、訴訟内における手続について定めた規定が中心にあるからです。
しかしながら、現代の刑事訴訟実務は、訴訟だけではなく起訴前についても裁判上の判断等が必要な場合があります。その場合は、訴訟とは別の裁判官がいろいろ判断をすることになりますが、基本的には訴訟の裁判官・裁判所と同様の手続方法・判断方法をとることになります。
勾留だと、刑事訴訟法では基本的に「起訴後の勾留」について定められているのですが、「起訴前の勾留」にも同様の規定(裁判官の判断要件)を適用したいので、
刑事訴訟法207条1項を準用するわけです。
刑事訴訟法207条1項は非常に忘れやすいので注意しましょう。
第二百七条 前三条の規定による勾留の請求を受けた裁判官は、その処分に関し裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。但し、保釈については、この限りでない。
あとは勾留と聞いたら、刑事訴訟法60条1項と刑事訴訟法87条1項を想像すればいいわけです。
第六十条 裁判所は、被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で、左の各号の一にあたるときは、これを勾留することができる。
一 被告人が定まつた住居を有しないとき。
二 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
三 被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
第八十七条 勾留の理由又は勾留の必要がなくなつたときは、裁判所は、検察官、勾留されている被告人若しくはその弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹の請求により、又は職権で、決定を以て勾留を取り消さなければならない。
② 第八十二条第三項の規定は、前項の請求についてこれを準用する。
刑事訴訟法60条1項及び刑事訴訟法87条1項の太字部分より
①被疑者(刑事訴訟法207条1項による読み替え)が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由
②刑事訴訟法60条1項各号該当事実
③勾留の必要
が必要になるというのはわかりやすいですね。
①罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由
この要件は「犯人性」と同様の判断をすることになります。つまり、被疑者=犯人と疑われる事情をあげる必要があるというわけです。
「犯人性」の考え方・論述の仕方は「事実認定」の箇所で解説しますのでここでは深入りしません。事実認定の犯人性の記事を楽しみにしていてください!
②:1号「住所不定」
では②の要件で各号がそれぞれ何を意味しているのか一つずつ確認していきましょう。
1号は「住所不定」を意味します。
この要件は簡単で住所があるかないかがポイントです。
問題として出題される被疑者はさすがに住所はあると思うので、この1号に該当する可能性は低いでしょう。よって2号3号に該当するかどうかがポイントになっていきます。
②:2号「罪証隠滅のおそれ」
2号は「罪証隠滅のおそれ」と略されることが多いです。
罪証隠滅のおそれの判断基準は4つあります。
㋐対象㋑態様㋒客観的可能性㋓主観的可能性
この4つは必ず覚えてください。勾留の要件で頻出です!!
㋐対象
罪証隠滅のおそれのある「事実」をあげます。このでのポイントは「犯罪」をあげるのではないということです。あくまで、「罪証隠滅の対象になる事実」をあげるのです。
基本的には被疑事実を詳しく説明すれば大丈夫でしょう。そのほか、正当防衛や責任能力といったものも対象になります。事案によって、本件では「何が争点か。何が問題になるのか。」を考えればよいのです。
㋑態様
態様としては2つを覚えておけば大丈夫でしょう。
証人の威圧と証拠の毀棄・隠匿
です。
たとえば、勾留がなされないと、野放しになるので
証人を「お前ふざけてんのか!証言をするな!」という態様であったり、
隠しておいた証拠を隠滅したり、
といった態様をとることが考えられます。
このように、事案に応じて、被疑者がとりうる「罪証隠滅」の「態様」を具体的に考えるのです。
㋒客観的可能性
客観的可能性とは、被疑者が実際に㋑の態様を行うことができるかどうか、行う可能性があるかどうかです。
証人の居場所を知っている場合(知り合いであったり、居場所の根拠がある場合)は証人威圧の客観的可能性があるといえるでしょう。逆に居場所を知らなければ(無関係者であり、居場所の根拠もない場合)は客観的可能性は小さいことになります。
証拠の毀棄・隠匿についても、証拠自体がすべて押収されている場合には客観的可能性は小さいといえますし、重要な証拠が残されている場合には客観的可能性が高いといえます。
㋓主観的可能性
主観的可能性は、被疑者が「罪証隠滅」を行えそうかどうかです。
たとえば
前科があったり、否認していたり
といった事情が関係していきます。
逆に、反省しているといった事情があると、主観的可能性は低くなるでしょう。
②:3号「逃亡のおそれ」
逃亡のおそれの場合は大学生をイメージしてください。
大学生が、逃亡のおそれを満たす典型例なのです!(笑)
逃亡のおそれの判断としては
単身・アルバイト・年齢が若い
の3要素を主に検討します。
ね、大学生でしょ??
そのほか、前科があったり、罪責が重かったりすると、さらに逃亡のおそれが強まります。
罪証隠滅のおそれの判断材料と若干重なる点も注意しましょう!
③:勾留の必要
必要ときたら考えるのは1つだけです。
公益の必要性(勾留をしなければならない事情)VS被疑者の被侵害利益の比較衡量です。
逮捕の場合の必要の判断は「罪証隠滅・逃亡のおそれ」でしたが、あれは逮捕が特別だっただけです。
通常、「必要」というのは公益の必要性VS被疑者の被侵害利益を考えることになります。
公益の必要性としては「事案が重大であること=いわゆる危険人物であること」やなどが挙げられます。一方、被疑者の被侵害利益としては「健康状態」や「家族の事情」などが考えられます。この日侵害利益の中で働き先の事情を考慮することも可能と考えられますが、基本的に「被疑者」がいなければならない会社上の地位というのはほぼないと考えられるので、会社の事情というのはあまり考慮されないと考えていてよいでしょう!
まとめ
以上、勾留の要件を手続的要件と実体的要件に分けて考えてきました。
あとは慣れることが大事です。そのような要素がどの要件にあてはまるのか、どう理由づけて書くかというのは問題を解かなければ身に付きません!
しっかり復習していきましょう!
〈勾留の手続的要件〉
①逮捕前置主義(逮捕をちゃんとしていること)
②時間制限を守っていること
〈勾留の実体的要件〉
①罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由(犯人性)
②刑事訴訟法60条1項各号該当事実
③必要
読んでくださってありがとうございました。ではまた~。
参考文献
刑事実務の基礎は、よりよい参考書がほとんどありません。
予備校本で勉強するのがよいでしょう。辰巳のハンドブックは予備試験口述の過去問まで載っているので、口述試験対策という意味でもお勧めします。
正直これ以外で改正された刑事訴訟法に対応した良い参考書は今のところないと思います。