正当防衛は要件を考えるだけ。わかりやすい解説【刑法総論その6】

刑法

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法上向

正当防衛は因果関係に続く,刑法総論での山場だね。

確かに正当防衛ってどこに着目して書けばいいかよくわからないんですよね。

法上向

正当防衛のコツは要件を考えることだ。

これまで,結果→行為→因果関係→故意(故意が認められなければ過失)と順を追ってやってきました。これらが構成要件該当性の判断です。

次の段階として,違法性阻却事由の判断をしていきます。第2フェイズです。この中で最も有名なのが正当防衛です。

正当防衛はいろいろな論点があり難しい分野だと思います。正当防衛のコツは要件を考えることです。以下,一緒に見ていきましょう。

正当防衛のポイント

①正当防衛はなぜ認められるかがわかる。
②要件について理解する。
正当防衛は要件についていろいろと問題が出てきているだけなので上記2点を押さえれば大体は大丈夫だと思います。

正当防衛は自力救済禁止の例外

刑法は,自力救済,つまり警察の力を用いず自分で違法状態を解消しようとすることを禁じています。もしこれが認められると,各人が勝手に違法状態を解消しようとして日本が荒れてしまいますよね。そうならないように,違法状態を解消したければ犯人を罰したければ警察にお願いしてくださいね,となっているのです。

しかし、警察にすぐに頼れない場合もあります。たとえばいきなり殴られてきたときです。このときも自力救済の禁止を貫くと,被害者は相手からの暴力を受けざる得ないことになります。これはちょっと考えられませんよね。

よって,刑法は,正当防衛を自力救済の要件として例外的に認めています。ただし,あくまでも例外なので要件が結構多く,その要件すべてを充たさないと正当防衛は成立しません。

というわけで,正当防衛は要件が大事というわけです。

正当防衛は自力救済の例外として認められたものである。

正当防衛はこれだけでオッケー

正当防衛の要件

正当防衛は要件を押さえていけば大丈夫です。まず,条文を見てみましょう。

(正当防衛)
第三十六条 急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。

これを見ながら,要件をあげていきます。

正当防衛の要件
①急迫不正の侵害←「急迫不正の侵害に対して」
②防衛意思←「自己又は他人の権利を防衛するため」
③相当性←「やむを得ずにした行為」

これ以外にも防衛行為等を要件とする場合もありますが,論点となるのはほとんどこの①②③ですので,私としてはこれで十分かと思います。重要なのは,要件がすべて充たされてはじめて正当防衛が成立するということです。

それぞれの要件に対して1つの論点があると思ってもらえれば大丈夫です。ではそれぞれの要件について解説していきます。

急迫不正の侵害は侵害の予期+積極的加害意思

急迫不正の侵害は文字通り,意味を感じ取ってください(笑)。時間的切迫性と不正な侵害があればよいのですね。

ここでの論点は,どういう場合に急迫不正が認められないか,です。なぜ急迫不正が認められない場合が論点になるかというと,急迫不正は判断しやすく,逆に急迫不正に一見見えるけど急迫不正とは見ないんですよ,という場合に注意が必要だからですね。

いろいろ議論されていますが,ここでは簡潔さ,明快さを優先して,一言でいいます。急迫不正に当たらない場合というのは侵害の予期+積極的加害意思がある場合です。侵害の予期は積極的加害意思の考慮要素の一つと考えるとわかりやすいでしょう。

ここで判例を見てみましょう。最新の判例を取り上げます。

もともと被害者と対立のあった被告人は,ある日,被害者に呼び出されたため,刃物を持って被害者の下へ行き,殺意を持って殺害した,という事案です。
最高裁は,行為者が侵害を予期した上で対抗行為に及んだ場合,侵害の急迫性の要件については,対抗行為に先行する事情を含めた行為全般の状況に照らして検討すべきであり,事案に応じ,行為者と相手方との従前の関係,予期された侵害の内容,侵害の予期の程度,侵害回避の容易性,侵害場所に出向く必要性侵害場所にとどまる相当性,対抗行為の準備の状況(特に,凶器の準備の有無や準備した凶器の性状等),実際の侵害行為の内容と予期された侵害との異同,行為者が侵害に臨んだ状況及びその際の意思内容等を考慮し,行為者がその機会を利用し積極的に相手方に対して加害行為をする意思で侵害に臨んだときなど,私人による対抗行為を許容した刑法36条の趣旨に照らし許容されるものとはいえない場合には,侵害の急迫性の要件を充たさないものというべきである。という旨の判示をしました。
(最判平成29年4月26日決定・要旨)
なかなか長すぎですね。ここに挙げられた考慮要素をすべて覚えるのはしたくありませんね(笑)。なので要点だけ押さえましょう。

ここでのポイントは,侵害の予期に加えて,侵害回避可能性も検討している点といわれます。

つまり積極的加害意思の要素として,これまでの判例は侵害の予期を主として考えていましたが,それに加えて侵害回避義務的な要素(警察等に頼れるのであればそっちを活用せよ)というものも含めて積極的加害意思を判断するとしました。これからどのような流れになるかわかりませんが,とりあえず,侵害の予期と積極的加害意思はマストで,考慮要素の一つとして侵害回避可能性があるんだなーという風に考えてもらえば大丈夫だと思います!
急迫不正は,どのような場合かわかりやすい。よって例外を理解する。急迫不正の侵害として認められないのは,加害者が①侵害の予期がある+②積極的加害意思がある場合ある。最近の判例ではさらに侵害回避可能性があるかどうかも考慮している。

防衛の意思はもっぱら攻撃の意思以外はオッケー

防衛の意思の要件は,必要説と不要説がありますが,ここでは判例通説をとり防衛の意思必要説,つまり防衛の意思も正当防衛の要件の一つと考えます。

防衛の意思がなければ,偶然防衛(状況的には正当防衛だが,正当防衛のつもりで行為に及んでいないとき)を排除することができないからといわれています。

判例では,防衛の意思と攻撃の意思が併存する際も防衛の意思の要件が認められてます。つまり,防衛の意思が少しでもあれば正当防衛は認められ,もっぱら攻撃の意思しかない場合は防衛の意思は否定されるということです。

防衛の意思の論点はあまり深くないのでこんなところにとどめますね。

防衛の意思は要件であり,もっぱら攻撃の意思しかない場合は防衛の意思の要件は否定される。

相当性はその場でできた必要最小限の行為

相当性も盛んに議論されている要件です。相当性が欠ける場合は,刑法36条2項の過剰防衛に当たるとされます。(過剰防衛については次回の記事で書く予定です)

相当性も一言で言います。相当性とはその場でできた必要最小限の行為です。

つまり,急に殴ってきたのに際して,石を投げつける行為を考えてみます。客観的に見れば殴るのに対して石を投げる行為は危険性が高く,相当性を欠くといえそうです。しかし,例えば現場が夜で他に助けを求めることのできる状況になく,殴ってきている人がガタイの大きい男性であり,襲われているのが女性だったとしましょう。そして,その男性が近づいているときに足元に石ころしか見つからなかったとします。この場合,その女性がその場でとれた行動として石を投げつける行為以外になかなか考えづらいですよね。

このように相当性の判断は現場に応じて様々な事情を考慮して考えていきます。ポイントはその場でできたという点です。あとから,客観的にみて「こうすることもできただろー」といって,正当防衛を否定するのではなく,「たしかにあの状況だったらこういう行動をとるしかないよね」という風に侵害状況に応じて判断するのです。

相当性はその場でできた必要最小限の行為かどうかで判断する。

まとめ

本当に簡潔にまとめることだけを意識して記事を書いてみました。正当防衛は学説が錯綜しています。それぞれの学説を理解することも本質の理解につながるので,ぜひ基本書等を読んでみてください!

それではまとめです。

①正当防衛とは自力救済禁止の例外である。
②要件は①急迫不正②防衛の意思③相当性である。①急迫不正は侵害の予期+積極的加害意思を検討し,②防衛の意思はもっぱら攻撃の意思ではないかを検討し,③相当性はその場でできた必要最小限の行為かを検討する。
ここで注意してほしいのは,①②は例外ですので,それが問題になりそうな場合でなければ特段深入りする必要はないということです。つまり,「侵害を予期して防衛してそうな事案だなー」と思ったら急迫不正が認められない場合ではないか検討するし,「専ら攻撃の意思を持った反撃じゃないか?」とか「本当にこの人は防衛の意思があったのだろうか?」と思う事例であれば②について検討するということです。そうでなければ,①②は軽く認めればよいです。

③については,正当防衛か過剰防衛かを分ける大事な部分なのでどの事案でも慎重に判断することになります。

正当防衛は学説,判例でいっぱいいっぱいになりそうですが,要件だけをしっかり押さえていけば,恐れるに足りません。がんばっていきましょー。

読んでくださってありがとうございました。ではまた~。

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