脅迫罪、強要罪もあまり論点が少ない分野だな。しかし、特に脅迫罪は強盗や恐喝の要件にもなる部分だから重要だぞ。
強要罪ってなじみがないわ。
実は強要罪も意外と出てくるんだ。強要罪が脅迫罪の進化形ということも忘れがちだな。詳しくみていこう。
脅迫罪・強要罪について、今回は見ていきましょう。といってもそれほど論点はない分野なのでさらっと確認する程度になると思います。
脅迫罪・強要罪のポイント
刑法各論は保護法益と要件をまずは確認することが重要でした。さらに今回の脅迫罪・強要罪は特段の論点がないので、本当に確認だけの回になります。
②要件を押さえる。
脅迫罪・強要罪の保護法益
脅迫罪の保護法益
脅迫罪の保護法益はズバリ意思決定の自由です。
本来人は意思の決定は自由に行うことができなければなりません。他の人からの圧力によって自由な意思決定が阻害されてはいけないのです。これを保護するための規定が脅迫罪というわけですね。
逆に言えば、脅迫罪は意思決定が侵害されている時に出てくる規定と言えます。
強要罪の保護法益
強要罪の保護法益は、意思決定による行動の自由です。
強要罪は脅迫罪の進化形なので、意思決定の自由+そこから行動する自由を保護法益にしている=保護法益の範囲を広げていることがわかります。
脅迫罪・強要罪の要件
脅迫罪(刑法222条)の要件
(脅迫)第二百二十二条 生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。2 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。
一般に脅迫罪の要件は
ポイントは害悪の告知です。これは一般人が畏怖される程度のものである必要がありますが、実際に脅迫を受けている者が現に畏怖しているかどうかは関係ありません。
一般的に、「それは言ったらダメでしょ。怖いでしょ。」という程度であれば自動的に害悪の告知に当たるというわけです。
つまり、脅迫罪は抽象的危険犯(実際に危険が生じている必要がない犯罪)といえます。
強要罪(刑法223条)の要件
強要罪は基本的に、脅迫罪の進化形です。これは条文からもわかります。
(強要)第二百二十三条 生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、三年以下の懲役に処する。2 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者も、前項と同様とする。3 前二項の罪の未遂は、罰する。
一般的に要件は以下の通りです。
ここで暴行と脅迫が構成要件になっていることがわかります。暴行と脅迫の言葉の意味を覚えていますか?
脅迫については上の方で説明しました。暴行については以下の記事を参考にしてください。
脅迫とは害悪の告知、暴行とは不法な有形力の行使のことでした。
なお、強盗罪は、暴行または脅迫となっているのに対し、強要罪は脅迫または暴行となっています。これは、強要罪はあくまで脅迫罪の進化形としての面が強いからだと考えています。
脅迫罪は人の意思決定の自由が保護法益でした。そして強要罪は意思決定の自由に基づく行動の自由が保護法益です。これは明らかに脅迫罪を意識したものですね。
よって、強要罪の根幹には「恐怖心」によって行動するというものがあるわけです。そのため、暴行は当人に対して直接与えられるものでなくても=間接的に当人に恐怖心を与えるものであればよいと説明されることが多いと思います。
脅迫未遂・強要未遂
脅迫罪と強要罪には未遂規定があります。
脅迫罪の実行行為は「害悪の告知」でした。
強要罪の実行行為は「害悪の告知または不法な有形力の行使によって義務のないことをさせること」でした。
しかし、実際に害悪の告知が伝わらなかった場合や実際には行為を行わなかった場合には未遂が成立します。
まとめ
脅迫罪は他の罪でも構成要件としてたびたび出てきます。強要罪は脅迫罪が絡む場合に意外と論述問題等でも出題されます。
重要なのは、脅迫とは何かをしっかり押さえておくことです。以下のまとめて詳しく書いてみます。
②強要罪は脅迫罪の進化形である。脅迫(暴行)に加えて義務のないことをさせようとすることが必要である。
③脅迫罪、強要罪は未遂も処罰され、たとえば害悪の告知が届かなかった場合や実際に行為を行わなかった場合には、脅迫未遂罪、強要未遂罪が成立する。
参考文献
刑法各論は刑法総論に引き続き,基本刑法をおすすめします。事例問題を示しながら解説されているので,初心者から司法試験対策まで幅広く対応できる作りになっていると思います。