どこで裁判をするべきか?裁判管轄をわかりやすく【民事訴訟法その3】

民事訴訟法

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法上向

訴訟物と訴え方が決まったら,次は何を考えようか?

えっと……,争い方ですかね。どういう感じで相手を追い詰めようか,みたいな…。

法上向

おっと,審理を始める前に訴状を提出しないといけないよね。そこで問題になるのが「どこの裁判所で裁判を行うのか」だよ。これを裁判管轄というんだ。

裁判所にはいくつかの管轄があります。つまり扱うテリトリーに違いがあるというわけです。そのため,原告被告はどこでも裁判を行えるわけではなく,ある程度裁判ができる場所は決まっていることになります。では具体的にどこで裁判所を行うべきなのか,みていきましょう。

裁判管轄のポイント

裁判管轄は2つの基準があります。職分管轄土地管轄です。さらに第一審裁判所では特別に事物管轄という基準が作用します。とりあえずこの3つの意味を押さえましょう。

次に移送の問題を押さえます。主に問題として出るのは移送の方なのでしっかり押さえることが大事です。

①職分管轄,土地管轄,事物管轄について理解する。
②移送の問題に対応できるようになる。
なお,法定管轄指定管轄合意管轄応訴管轄のような違いや,専属管轄任意管轄といった用語がありますが,これは混乱を招くと思うので説明を省きます。

タテの関係である職分管轄

まず,どの審級の裁判所で裁判をするべきなのか,について考えてみましょう。

基本的に第1審は簡易裁判所地方裁判所のいずれかになります。ただし特別の法律の定めがある場合はいきなり高等裁判所が第1審となる場合もあります。いきなり最高裁判所で訴訟を行うことはできません。

また第2審裁判所へは控訴,第3審裁判所へは上告をして,一つ階級の上の裁判所に対してもう一度審理をお願いすることができます。これを三審制というわけですね。

上図のように,どこのランクの裁判所が担当するか,役割分担を基準にした分け方を職分管轄というわけですね。

ヨコの関係である土地管轄

土地管轄は名前のとおり,どこの土地の裁判所が管轄を持つのか,という問題です。これは基本的に民事訴訟法4条を見れば解決します。

(普通裁判籍による管轄)
第四条 訴えは、被告の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所の管轄に属する
2 人の普通裁判籍は住所により、日本国内に住所がないとき又は住所が知れないときは居所により、日本国内に居所がないとき又は居所が知れないときは最後の住所により定まる。
3 大使、公使その他外国に在ってその国の裁判権からの免除を享有する日本人が前項の規定により普通裁判籍を有しないときは、その者の普通裁判籍は、最高裁判所規則で定める地にあるものとする。
4 法人その他の社団又は財団の普通裁判籍は、その主たる事務所又は営業所により、事務所又は営業所がないときは代表者その他の主たる業務担当者の住所により定まる。
5 外国の社団又は財団の普通裁判籍は、前項の規定にかかわらず、日本における主たる事務所又は営業所により、日本国内に事務所又は営業所がないときは日本における代表者その他の主たる業務担当者の住所により定まる。
6 国の普通裁判籍は、訴訟について国を代表する官庁の所在地により定まる。

民事訴訟法4条1項では土地管轄は被告の普通裁判籍となるそうです。

では普通裁判籍とは何か?

それは2項以降を見ればわかります。2項には人の普通裁判籍は基本的に住所であるとされています。

つまり,土地管轄は基本的に被告の住所になるというわけです!

事物管轄は第1審を地裁簡裁どっちにするか

事物管轄は,基本的に第1審裁判所を地方裁判所と簡易裁判所のいずれにするのか,という問題です。

まず原告と被告で合意のない通常の場合を考えてみましょう。

おススメは民事訴訟法8条を見ることです。

(訴訟の目的の価額の算定)
第八条 裁判所法(昭和二十二年法律第五十九号)の規定により管轄が訴訟の目的の価額により定まるときは、その価額は、訴えで主張する利益によって算定する。
2 前項の価額を算定することができないとき、又は極めて困難であるときは、その価額は百四十万円を超えるものとみなす。

民事訴訟法8条は訴額の算定の条文ですが,これを事物管轄の考えに利用することができます。2項140万円という文字があるからです。この条文を見ることで事物管轄の一つの基準である140万円を思い出すことができます。

さらに8条1項より裁判所法の規定により定まる管轄というのは事物管轄です。
デイリー六法等の小さい六法には後ろに参照条文の箇所があり,裁判所法の条文が具体的にな何条かが書かれています。裁判所法33条1項1号と24条1項ですね。

裁判所法は細かいので結論だけ書きますが,
不動産や140万円を超える請求の場合に地方裁判所が,140万円以下の請求の場合には簡易裁判所が管轄権を有するとされています。

不動産140万円が基準であるという点を覚えておきましょう!

ただし,例外として,原告と被告の間に管轄についての合意がある場合,別で原告と被告で「もし訴訟になっちゃったら,〇〇裁判所で第1審をしようねー」という合意を設定しておくことがあります。こうなると話は別です。

合意がある場合はその合意は上記法律による事物管轄より優先されます。このことは民事訴訟法11条に書かれています。この場合を専属的合意管轄と言ったりします。

(管轄の合意)
第十一条 当事者は、第一審に限り、合意により管轄裁判所を定めることができる。
2 前項の合意は、一定の法律関係に基づく訴えに関し、かつ、書面でしなければ、その効力を生じない。
3 第一項の合意がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その合意は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する。
合意がある場合は140万円や不動産であるかどうかに関係なく,簡易裁判所にしたり,地方裁判所にしたりできるというわけです。もちろん場所もいろいろ設定できます。

じゃあ,嫌がらせで,もし訴訟になったら〇〇裁判所に提訴してね~ってことで,被告からめっちゃ遠い裁判所が指定された契約書に合意をしてしまっている場合には,その裁判所でするしかないってことですかー!

法上向

事物管轄によれば11条よりそうなりそうだよね。しかしその場合は移送の問題になりそうだね。移送について詳しくみていこうか。

移送の問題

移送は管轄とセットで出てくるところです。少し難しい部分もありますが,基本的に条文が理解できればオッケーだと思います。詳しく見てみましょう。

移送とは,ある裁判所で訴えられた訴訟を他の裁判所に移すことを指します。

(遅滞を避ける等のための移送)
第十七条 第一審裁判所は、訴訟がその管轄に属する場合においても、当事者及び尋問を受けるべき証人の住所、使用すべき検証物の所在地その他の事情を考慮して、訴訟の著しい遅滞を避け、又は当事者間の衡平を図るため必要があると認めるときは、申立てにより又は職権で、訴訟の全部又は一部を他の管轄裁判所に移送することができる
(専属管轄の場合の移送の制限)
第二十条 前三条の規定は、訴訟がその係属する裁判所の専属管轄(当事者が第十一条の規定により合意で定めたものを除く。)に属する場合には、適用しない。

移送の条文は民訴16条~20条までありますが,ここでは民訴17条のみを取り上げます。民訴17条によれば,当事者間の衡平を図る必要がある場合は移送ができるというわけです。

さらに,移送は民事訴訟法20条1項で制限されるわけですが,11条が外されていることがわかりますね。

あれ?11条って……

法上向

そう!あの合意でどこでも裁判管轄を決めれるってやつだね(専属的合意管轄)。

つまり,合意で自由に管轄合意を決めれるとはいえ,相手方に不合理な場合には民事訴訟法17条による移送が可能である,ということです。

他にも移送が可能な場合がありますが,発展的ですし,条文をみれば大体はわかるので移送はこと程度にとどめたいと思います!

まとめ

管轄と移送のまとめを見ていきましょう。

①管轄には,職分管轄,土地管轄,事物管轄がある。
②職分管轄はタテの関係である。土地管轄はヨコの関係である。事物管轄は第一審をどこで行うかである。
③事物管轄については民事訴訟法11条より当事者間の合意により管轄を定めることができるが,それが不合理な場合には民事訴訟法17条より移送がなされうる。
以上です。

裁判管轄はあまり論点として登場しませんが,民事訴訟の流れを知っているうえでは重要なポイントなので軽く押さえておきましょう。

読んでくださってありがとうございました~。

参考文献

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