逮捕・監禁罪の保護法益と要件をわかりやすく説明【刑法各論その5】

刑法

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監禁罪ってよくニュースになってますよね。

法上向

しかし、ふつうの人はどういう場合に監禁罪が成立するのか知らないだろうな。

 

私は特に、逮捕・監禁罪の罪数関係がわからなくなります(汗)。

法上向

よし、それじゃあ、今回は逮捕・監禁罪について詳しくみていこう。

逮捕・監禁罪は、刑法全体の試験ではあまり出題は多くありませんが、刑法各論だけのテストでは出題が多い分野だと考えています。論点もあまり多くなく、すんなり理解できる面も多いので、あっさりと確認する感じの記事になると思います。

逮捕・監禁罪のポイント

まず保護法益を押さえましょう。移動の自由です。そのうえで、構成要件を押さえます。ここらへんはあまり問題になりません。論点としては意思能力を必要とするかです。

①逮捕・監禁罪の保護法益を押さえる。
②要件を理解する。
③罪数の処理が確実にできるようになる。

それではみていきましょう。

逮捕・監禁罪の保護法益

逮捕・監禁罪の保護法益

移動の自由

です。

さて、この点について、移動の自由は意思能力のないものにも認められるのか?という論点があります。

この点、判例は、意思能力は必要ない、としています。とにかく移動しようと思ったら移動できる自由が損なわれていたらアウトというわけです。

睡眠中の者や赤ん坊、泥酔者であっても、監禁行為をすれば監禁罪に問われることになります。たしかに、監禁行為をしても当人が睡眠中であったならば犯罪が成立しないというのは、社会的にみてどうかな、と思いますもんね。

逮捕・監禁罪の要件

刑法220条に規定があります。

(逮捕及び監禁)
第二百二十条 不法に人を逮捕し、又は監禁した者は、三月以上七年以下の懲役に処する。

要件はズバリ以下のようになるでしょう。

①不法に②逮捕または監禁③故意

さて、まず気になるのが、逮捕監禁の区別ですよね。

逮捕とは直接の拘束

逮捕とは、直接人の身体を拘束することを指します。

イメージこんな感じですね。ポイントは「直接の拘束」という点です。

監禁とは一定の区域外に出ることを困難にすること

一方、監禁は、裁判例では「人をして一定の区域外に出ることを得ざらしめること」という文言があり、簡単に言えば一定の区域外に出ることを困難にすることを言います。

これは困難であればよいので、完全に不可能とはいえなくてもよいです。出ることが著しく困難であればよいとされています。

さらに、この困難さは一般人が基準となります脅迫の害悪の告知について一般人を基準にしたのと同じような感じです。

監禁の保護法益は移動の自由ですが、前述のとおり、被害者の意思能力は問いません

不法に

これは、正当行為であったり被害者の承諾があったりした場合には不法ではないから監禁罪の構成要件とはならないよ、ということを表すための要件です。

通常、承諾(同意)というのは、違法性阻却事由になりました。しかし、逮捕・監禁罪は構成要件段階でこの同意の有無を検討するというわけですね。

変な話になりますが、縛りプレイというような場合には、被束縛者には同意があると考えられるので、①不法にの要件は満たさないというわけです。

なお、刑法の通説は重大な錯誤説(被害者が本当のことを知っていたとしたら同意しなかったであろう場合には同意は無効という立場)に立つので、逮捕・監禁の被害者が逮捕監禁に同意していたとしても、その同意が欺罔によるものであった場合などには「不法に」の要件を満たすことになります。

 

 

罪数関係は基本から考える

さて、逮捕・監禁罪で一番迷うポイントといっても過言ではないのが罪数関係です。しかし、この罪数関係も基本的な考えのままいけば間違うことはないでしょう。

通常、逮捕・監禁罪が成立する場合は併合罪(刑法45条前段)というのも移動の自由を保護法益とする犯罪が被ることはほぼないからです。そして一つの行為で逮捕・監禁罪と別の犯罪を行うということもほぼ不可能でしょう。よって観念的競合もあまり考えにくいです。

しかし、逮捕罪が成立したあと、監禁を行った場合には、両罪は法益が一緒なので包括一罪になります。もともと逮捕・監禁罪とまとめて一つの犯罪として取り扱っているので当たり前といえば当たり前ですが…。

さらに、次回に学習する拐取(誘拐)をしたのちに、監禁を行った場合(試験で出るのはこの場合が多い)には併合罪(刑法45条前段)と考えておけばよいでしょう。学説では見解が様々です。

誘拐から監禁が行われる問題が多いですよね。この場合は監禁罪ということですか?

法上向

そうだね、

次回で詳しく説明するが、拐取罪は状態犯であると考える(継続犯ではない)と併合罪という結論はしっくりくるよ。

まとめ

以上、逮捕・監禁罪についてみてきました。保護法益要件(特に言葉の意味)をきちんと押さえれば、あとはあてはめるだけなので簡単なのではないでしょうか。

最後に復習してみましょう。

①保護法益は移動の自由である。意思能力のありなしは関係ない。
②逮捕は直接の拘束を意味する。
③監禁は一定の区域外に出ることを困難にすることである。
④不法に、とは本来違法性阻却事由となるものを構成要件レベルに下げたことを意味する。
⑤罪数関係は基本に忠実に考えればよい。

以上です。読んでくださってありがとうございました。ではまた~。

参考文献

刑法各論は刑法総論に引き続き,基本刑法をおすすめします。事例問題を示しながら解説されているので,初心者から司法試験対策まで幅広く対応できる作りになっていると思います。

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