信教の自由・宗教の自由(憲法20条)を理論的に解説【憲法その5】

憲法

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法上向

信教の自由,宗教の自由(憲法20条)についてみていこうか。

信教の自由が問題になる判例ってありましたっけ?

法上向

実は信教の自由が単純に問題になる重要判例は少ないんだ。むしろ政教分離の方が重要だな。今回は単純な信教の自由についてみていくのだが,理論と判例の乖離が激しい。そのため,今回は確認程度で済ませることにしよう。

信教の自由(憲法20条)の問題はあまり問題として出ません。出るとしても政教分離か判例に絡めた問題です。そのため,理論で推し切る「はじめての憲法」シリーズでは軽く考え方に触れる程度にとどめようと思います。

判例と理論がかなり乖離している分野ですので,これから述べる三段階審査論違憲審査基準論は参考程度にとどめておいた方がよいかもしれません。とはいえ,特に初学者の方にとっては全貌を捉えるという意味で重要な考え方になってくると思うので,オススメではあります。

それでは見ていきましょう。

信教の自由(憲法20条)のポイント

信教の自由(憲法20条)が法律によって正面から規制されることはまずないでしょう。そのため,信教の自由は基本的に間接的・付随的に規制されることになります。また,思想良心の自由にも通じるものがあり,自由の内容にもある程度の種類があります。それらを簡単に押さえていこうと思います。

①憲法20条の保護領域
②憲法20条の違憲審査基準
それでは見ていきましょう。

信教の自由(憲法20条)の保護領域

憲法20条の条文の確認

まず憲法20条の条文の文言を確認してみましょう。

第二十条 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
2 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
3 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。

基本的に問題になるのは,憲法20条1項または3です。2項はあまり見たことがありません。

ここでポイントは,1項2項の違いです。この違いは政教分離でも重要になるのですが,簡単に言うと,1項は宗教団体についてであり,2項は宗教一般についてということです。つまり1項の方が適用の範囲は狭いことになります

宗教の定義

条文を見てまず疑問に思うのが,宗教の定義です。

「超自然的、超人間的本質(すなわち絶対者、造物主、至高の存在等、なかんずく神、仏、霊等)の存在を確信し、畏敬崇拝する心情と行為」をいい、個人的宗教たると、集団的宗教たると、はたまた発生的に自然的宗教たると、創唱的宗教たるとを問わず、すべてこれを包含するもの
判例によれば上記のように定義されています。しかしこれを覚えるのはさすがに負担大です。ここでのポイントは宗教というのは〇〇教といった多くの教徒がいるものだけではなく,あらゆるもの(無宗教を含む)の信仰を指すということです。

〇〇教といったものは宗教団体(憲法20条1項)に部類すると考えるとわかりやすいでしょう。つまり,3項の宗教は上記の定義であらゆる信仰が含まれ,1項は我々が一般的に「宗教」と思うものというわけです。

信教の自由の種類

信教の自由は思想良心の自由と同じように,態様によっていくつかの種類に分けることができます。

①信仰を保持する自由
②信仰を形成する自由
③信教の告白を強制されない自由
④信仰に反する行為を拒否する自由
①②③はあまりないでしょう。問題になるとしたら④信仰に反する行為を拒否する自由です。これも思想良心の自由と同様に踏み絵を考えればわかりますね。

まとめ

以下にまとめてみます。

憲法20条の宗教はあらゆる信仰が含まれる。
信教の自由が問題になるのは主に,信仰に反する行為をさせられそうになっている場合である。

信教の自由(憲法20条)の違憲審査基準

二重の基準論

保護領域,制約の有無を検討した後は,性質や裁量等から違憲審査基準を設定しなければなりません。まずは性質から見ていきましょう。

性質はまず二重の基準論を考えます。信教の自由も精神的自由なので経済的自由よりも重要であると考えられています。これは思想良心の自由と同様ですね。

さらに,信教の自由は,信教者にとって絶対的なものであり,自由の侵害が個人に深刻なアイデンティティの侵害をもたらすものです。さらに,多元化社会では信仰活動への配慮が事実上不可欠とされています。

そのため,信教の自由は基本的に厳格審査とされています。

基本的に付随的制約

しかし,信教の自由を正面だって侵害する規定が作られることはまずありません。通常は別の目的がある規定や行為が付随的・間接的に信教の自由を制約することになります

よって,直接的ではないため,審査基準は一段階下がり,中間審査を用いることになります

よって,目的が重要かどうか,手段に合理性があるか必要性があるか,相当性があるか(他によい手段はないか)を検討していくことになります

すごく単純ですね。もちろん,ないとは思いますが直接的制約の場合は厳格審査ですよ!

まとめ

信教の自由の問題は信教の自由の性質と規制態様をしっかり把握して違憲審査基準を設定することになります。

①信教の自由は信教者にとって絶対的なものであり,自由の侵害が個人に深刻なアイデンティティの侵害をもたらすものであり,多元化社会では信仰活動への配慮が事実上不可欠であるから重要である。
②直接的制約の場合は厳格審査,付随的・間接的制約の場合は中間審査となる。

まとめ

以上,信教の自由(憲法20条)の問題を見てきました。しかし,実は判例と理論は大きく乖離しています。というのも,判例で信教の自由が問題になるのは適用審査であるうえに間接的制約であり,かつ裁量権が大きくはたらく場合なのです。この場合は総合衡量となるパターンがほとんどであり,その場での判断となるため,理論的な説明が難しくなります。

とはいえ,初学者にとっては理論をまず基礎として持っておくのは重要だと思うのでこの記事を書かせていただいた次第です。参考になればありがたいです。

読んでくださってありがとうございました。ではまた~。

参考文献

三段階審査論に沿って解説されている基本書を紹介します。憲法の答案の書き方の参考にもなると思います。憲法独特の答案の書き方に困っている方はぜひ参考にしてみてください。

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